第4回:「先生に私の気持ちが分かるんですか?」

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 あなたはある患者に厳しい病状を告げた。最後まで伝え終わったとき、その患者は涙ぐみ、沈黙した。あなたは重苦しい空気に居心地の悪さを感じ、「悲しいですよね」と言葉をかけた(このような言葉を、本稿では「患者の気持ちを言い当てる言葉」と定義する)。するとその患者はやや憤慨した様子で、「先生に私の気持ちが分かるんですか?」と言った。あなたはなんと答えてよいか分からず、当惑してしまった。患者は言葉を続けた。「私は悲しいんじゃない、悔しいんです。今まで文句を言わずにつらい治療も受けてきたのに、それが無駄だったと思うと、とても悔しい。私の時間を返してほしい」。

清水 研(しみず けん)

がん研究会有明病院 腫瘍精神科 部長

1971年生まれ。精神科医・医学博士。金沢大学卒業後、都立荏原病院(現・東京都保健医療公社荏原病院)での内科研修、国立精神・神経センター(現・国立精神・神経医療研究センター)、都立豊島病院(現・東京都保健医療公社豊島病院)での一般精神科研修を経て、2003年、国立がんセンター(現・国立がん研究センター)東病院精神腫瘍科レジデント。以降、一貫してがん患者および家族の診療・ケアを担当している。2006年、同センター中央病院精神腫瘍科勤務。同科科長を経て、2020年4月より現職。日本総合病院精神医学会専門医・指導医。日本精神神経学会専門医・指導医。日本サイコオンコロジー学会登録精神腫瘍医。近著に『がんで不安なあなたに読んでほしい。 自分らしく生きるためのQ&A』(ビジネス社)、『もしも一年後、この世にいないとしたら。』(文響社)。

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