獨協医科大学越谷病院こころの診療科.井原 裕 平成30年度診療報酬改定で、「入院時支援加算」が新設されました。 これは、入院予定患者を対象に、入院中の治療・生活への準備をサポートするものです。ポイントは、 1.身体的・社会的・精神的背景を含めた患者情報の把握2.褥瘡危険因子の評価3.栄養状態の評価4.持参薬の確認5.入院中に行われる治療・検査の説明6.入院生活の説明7.退院困難な要因の有無の評価 などです。薬剤師としては、上記4の持参薬を確認し、服薬状況、飲み合わせを検討することを手がかりに、患者に関わることになります。 その際、精神科医の立場から薬剤師にぜひチェックしていただきたいことは、せん妄リスクの評価です。入院先の病院の多くには常勤の精神科医はいないでしょうし、入院後にせん妄が発生すると、病棟は混乱してしまいます。 せん妄のリスクは、入院前にある程度分かります。持参薬の中に抗精神病薬、睡眠導入薬、オピオイド、ステロイドなどがあれば要注意です。しかし、意外な薬剤がせん妄を起こすこともあります。H2受容体拮抗薬、抗コリン薬、GABAに拮抗する抗菌薬(カルバペネム系、ニューキノロン系)などで、医師はこれらがせん妄を起こすという想定はしていないことが多いでしょう。 だからこそ、事前にリスクを察知し、必要に応じて医師に情報提供することが大切なのです。 持参薬を中止できないときもあるでしょう。そうなると次にチェックすべき点は、飲酒と睡眠・覚醒リズムです。毎日3合飲酒している人の場合、入院後の断酒により、入院3日目ごろから離脱せん妄のリスクが高まります。できれば、1週間ごとに1合ずつ減らし、入院7日前には断酒できていると理想的です。 睡眠・覚醒リズムに関しては、入院後の消灯時刻と大きなずれのない生活を入院前に送ってもらうとよいでしょう。入院後、普段の就床時刻と異なる時刻に眠りを強いられると、不眠を訴え、睡眠薬が投与され、それがせん妄の引き金となることがあります。無用な投薬を避けるためにも、入院前からリズムの調整が望ましいです。 新設された項目の中で薬剤師に関連するものとしては、「地域包括診療料」の中の「薬剤適正使用連携加算」、「感染防止対策加算」の中の「抗菌薬適正使用支援加算」、「処方料」および「処方箋料」の中の「向精神薬調整連携加算」などです。日本病院薬剤師会が、「平成30年度診療報酬改定について」をウェブで公開しています。詳しくは、そちらをご参照ください。