【実践編】薬剤師のための健康行動科学/性格タイプ別アプローチ赤色タイプ(外向・合理型) 参考になった 名の医師が参考になったと回答 記事をクリップ 記事をクリップして、あとでマイページから読むことができます Facebookでシェアする Xでシェアする Lineでシェアする ケース4 イライラする患者さん 50歳代男性、経口糖尿病治療薬のジャヌビア(50mg)とメトグルコ(250mg×6錠、前回から増量)が処方されているが、過去の薬歴には詳しいことは記載されていない。スーツ姿で、午前中の外来を受診し、これから出勤する様子。薬歴に「長い説明は嫌がられる」「HbA1c 7.2%」「アドヒアランス良好」と記述がある。 失敗例 NGワード、ピットフォール 「この薬は・・・」(順番に1つ1つ説明していく) →「赤色」タイプの患者さんは、薬の説明などはわかりきっていることで時間が無駄だと感じます。質問があれば自分から尋ねますが、意図がわからない薬剤師からの質問にはイライラしがちです。話す優先順位を考えて、結論から話すようにすることで円滑に進むことが多いです。 「まだ、HbA1cは高いですね」 →他人が自分に対して判断を下すようなことは嫌がります。自分で判断するための情報を求められます。しかし、判断するのはあくまで自分なので、この様な発言をするとすぐに「今日はいくら?」と支払いを求められると思います。「赤色」タイプは一方的な説明や指導をとても嫌います。 では、どう対応すればいいの? 成功例 今回の患者さん・・・「赤色」タイプ (意識の向きは「外向」 思考の方向は「合理型」) 見分け方 薬歴には服薬指導の記録が少ないことが多く、具体性に乏しい場合が多い。例えば「低血糖について指導」や「アドヒアランス良好」といった具合。「赤色」タイプは、投薬時に質問されることや、指導されることを嫌います。 対応 (1)話す優先順位を考える 「赤色」タイプの患者さんの対応では、話の目的やゴールが明確なことが重要です。基本的に説明を受けることは好まないため、説明するときは重要度の高いことから効率良く行うよう気を付けます。ねぎらいの言葉や感情面の配慮よりも、結論から話したり、質問をするときにはその理由や患者さんにとってのメリットを明確にします。 漫然と型通りの薬の説明を頭から順番に始めてしまうと、すでに医師から聞いた薬の情報としばしば重複しているためにイライラを募らせることにつながります。まず、医師からどの程度説明を受けているのか質問し、話してもらいます。補う必要があれば、重大なもの、優先順位が高いものを選んで、必ず説明する理由も補足します。 (2)テンポに気を付けて話す 合理性を重視するため、時間を大切にしています。ゆっくり説明されることは好みません。場合によっては、患者さんのテンポに合わせることも必要となります。 (3)論理的に話す 数値やエビデンスを具体的に示すことで信頼を得ることができます。逆に「しっかり服用して」「食事のバランスに気を付けて」といった曖昧な表現は信頼を失うかもしれません。またこの「赤色」タイプの患者さんは時折、「どうして●●なんだ!」といったことを強い口調で言うことがあります。薬剤師は、怒られていると思って謝ってしまうことも多いと思います。しかし、このタイプは具体的な説明を求めていることも多いので、臆せずにきちんと理由を説明してみましょう。 行動はある日突然変わってしまうこともあるので、少しでも長く療養行動が持続できるよう支援することも薬剤師の仕事として大切なのではないかと思っています。 というのは、「実行期」「維持期」の方、例えば年末にタバコをやめていた人(維持期)でも、忘年会で1本タバコを吸ったことをきっかけにまた吸い始めてしまうということを経験するからです。 自分の性格タイプを知ろう 自分がどの色が強いタイプなのか知っておくことが大切です。というのも、自分と同じ色の患者さんとは簡単にコミュニケーションが取れますが、正反対の性格タイプ(図1では斜め位置の色)だと、興味関心の方向も判断の基準も異なるために意識していないとすれ違いが起きやすいのです。例えば、自分が「緑色」が強いタイプだと思っているのであれば、積極的な「赤色」の患者さんの対応が難しいかもしれません。また、「青色」が強い薬剤師は、明るく話好きの「黄色」の患者さんへの対応に苦慮しているかもしれません。 しかし、前述したように全ての人が4色すべてを持っているので、その患者さんの色に合わせることを意識すると対応できるようになります。筆者は、薬局では「青色」と「緑色」が主に出ているタイプです。そのためか、薬局で「黄色」の患者さんとの対応は少しぎこちないと感じていました。実際、投薬時に「またぁ~うまいこと言って上手ね~!!(笑)」と言って患者さんに肩をバシッと叩かれたりすると、なぜ突然叩かれるのかちょっと困惑していました。しかし、色を意識することで次第に慣れていった経験があります。このように、自分と違うタイプはすぐには理解しにくいのですが、意識することで理解できるようになり、コミュニケーションも円滑になっていきます。 まとめ 4つの性格タイプを知ることでコミュニケーションが円滑になる。自分の性格タイプを知ることが円滑なコミュニケーションの第一歩になる。「赤色」タイプの患者さんには、結論から説明するなど優先順をつけ、論理的な説明が重要になる。 おわりに 薬剤師がHbA1c値などを尋ねると、「なぜそんなことを薬局で話さないといけないんだ?」と強い口調で言われることもあると思います。これは不快感を示していることもありますが、疑問を表明していることでもあるので、臆せずにきちんと論理的に説明することが重要になります。筋が通っていれば、納得されるのは合理型の特徴です。 次回は「黄色」タイプの患者さんへの対応についてです。薬局では待合室で楽しそうに隣の患者さんと話していたり、世間話が長くなりがちな患者さんはこのタイプです。 参考文献 岡田浩. 3☆ファーマシストを目指せ!. 東京, じほう, 2013, p65-82.坂根直樹. 質問力でみがく保健指導. 東京, 中央法規, 2008, p61-69.坂根直樹. 説明力でみがく保健指導. 東京, 中央法規, 2011, p112-124. [PharmaTribune 2015年8月号掲載] 参考になった 名の医師が参考になったと回答 記事をクリップ 記事をクリップして、あとでマイページから読むことができます Facebookでシェアする Xでシェアする Lineでシェアする ×