薬剤師のための漢方薬講座/「本治」と「標治」

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漢方薬は難しい、とっつきにくいと敬遠している薬剤師は多いのではないでしょうか?それもそのはず、漢方薬の添付文書の効能・効果にはたくさんの症状が並んでおり、それらがメーカーによっても違うのです。なぜなら、処方の真意は効能・効果に書かれていないからです。体質や症状から治療薬を選ぶ漢方医学は、皆さんにとって馴染みがない理論体系でしょう。 

東洋医学の基本となる考え方を、東洋医学のエキスパートである南澤潔先生に解説していただきます。

亀田総合病院 東洋医学診療科
南澤潔

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「本治」と「標治」

人の体は60兆(世界人口の実に1万倍!)とも言われる構成細胞と、それを遥かに上回るとされる共生細菌が織りなす「小宇宙」です。その超複雑系の小宇宙を、多数の生薬(しかもその生薬自体も多数の成分からなる複雑系)を一定の割合で配合した、現代医学の単成分系の薬に比べれば超複雑系である漢方薬で変化させていく、それが漢方の本来の力です。こうした治療を「本治」といいます。この場合、人体をどのように変化させるのか?つまり、「漢方薬の薬効」を一言で説明することは簡単なものではありません、といいますか不可能です。「瘀お血(けつ)(血の滞り)を改善する薬」「気血の巡りを良くします」など東洋医学的な理論体系でボンヤリと解説するしかありません。

他方、漢方薬には便利な対症療法薬としての使い方もあり、これを「標治」といいます。今普及しているのは殆どの場合はこの標治法としての漢方です。この場合も予期せぬ効果が出ることもありますが、漢方の理論からすると多くは当たり前のことなのです。

◆執筆者◆ 南澤 潔 氏


医学博士
日本東洋医学会 漢方専門医・指導医
日本内科学会  総合内科専門医・指導医
日本救急医学会 救急科専門医 

【ご略歴】
1991年 東北大学医学部 卒業
1991年 武蔵野赤十字病院 研修医
1993年 富山医科薬科大学(現 富山大学)和漢診療科
1995年 諏訪中央病院 内科
1996年 成田赤十字病院 内科
1999年 麻生飯塚病院 漢方診療科
2001年 富山大学 和漢診療科
2006年 砺波総合病院 東洋医学科 部長
2009年 亀田総合病院 東洋医学診療科 部長

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