「受け持ち患者が自殺したら、同僚と必ずミーティングをして治療を振り返る時間をとったほうがいい。でないとそのあとの診療に差し障る。例えば、自殺した患者に処方していた薬を避けて出さないようになってしまう」 先輩医師の口からそう聞いたのか、本で読んだのか、今はもうはっきりしないが、初めてこの言葉を知ったのは精神科医になってすぐだった。受け持ちの患者の自殺をまだ経験していなかったので、ぴんとこず、へえそういうものかと思ったが、受け持ち患者の自殺を経験した精神科医の生々しい経験からこの言葉が発せられていることはわかったので、なんともいえない怖さを感じた。