「え、僕、精神分裂病なんですか」 病棟の診察室で患者さんが声をあげた。『統合失調症』に今は変わったが、当時は『精神分裂病』という病名を使っていた。窓がなく、壁はコンクリート。机がひとつにイスが2つ3つしかない小さな診察室に患者さんと2人きりだった。そのせいもあって声だけでなく、気持ちが伝わってきた。驚き、悲しみ、怒り、絶望。患者さんは黙り込んでしまった。