RSウイルス(RSV)感染症は、小児の感染症として捉えられがちであるが、実際には成人や高齢者の罹患(再感染を含む)が多く、重症化・死亡に至る例も少なくない1)。文献レビューとメタ解析に基づく研究によると、日本では60歳以上のRSV感染症は年間約70万例発生し、このうち入院が約6万3,000例、入院例中の死亡は約4,500例と推定されている2)。それに対し、小児の受診例は2021年には約22万7,000例と報告されており3)、日本でもRSV感染症は小児より成人・高齢者に多いことが認識されつつある。このような背景から、近年は感染予防を目的とした抗体薬やワクチンを中心に開発が進み、診療ツールがそろい始めてきた(関連記事:朗報!60歳以上対象にRSVワクチンが本日承認)。本稿では、RSV感染症の最新知見を踏まえ、診療技術の進歩をキャッチアップするとともに残された問題点を見直し、RSV感染症診療の将来を展望したい。