【2025年医学はこうなる】加藤忠史

順天堂大学精神医学講座教授

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【私が選んだ医学2024年の3大ニュース】

1. 大学病院崩壊の危機

 2024年は、大学病院の危機を示すニュースが多かった。最も象徴的なのは、国立大学病院長会議が10月4日に発表した、国立大学病院全体の赤字が260億円に拡大し、「国立大学病院がなくなることで医療崩壊が起こる可能性もある」と同会議会長の大鳥精司・千葉大学病院病院長が述べたことである。苦しいのは国立大学だけではない。私立大学の収入ランキングで1位であった順天堂大学(東洋経済ONLINE 2月24日)は、さいたま市浦和美園に建設予定であった新病院計画について、建設費高騰、大学病院の厳しい財政状況などにより、11月29日に中止を決定した。

 大学病院は、さらなる困難に見舞われている。医師の働き方改革の影響で、時間外労働に上限が設けられ、これまで民間病院でのパートで生計を立てていた大学病院の医師の他院での勤務が時間的に厳しくなっている。このような状況の中、若手医師が初期研修後、専攻医として専門研修を行わずに直接美容外科に進む、「直美(ちょくび)」が増えているという(関連記事「美容転身の医師が"直美(ちょくび)"に言及」)。

 このままでは大学病院の崩壊、ひいては日本の医療崩壊が避けられない。保険診療の枠組みを大きく見直すことで、大学病院の診療収入を確保し、大学病院の医師に相応の給与を支払う方策を立てない限り、サステナブルではないだろう。

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