糖尿病例の降圧におけるNa制限、U字カーブに要注意

重要性実証も「目標値」には検討の余地?

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〔編集部から〕本連載は、主要医学ジャーナルに目を通すことを毎朝の日課としている医学レポーターが、SNS上での反響も踏まえ、毎週特に目を引いた論文5本をピックアップ。うち1本にフォーカスします。6月9~15日の1週間に公開された論文からフォーカスしたのは「糖尿病例の降圧増強のための食事療法」に関する論文。その他のピックアップ論文は、末尾をご覧ください。

難渋する糖尿病例の血圧管理

 2型糖尿病例の心血管疾患(CVD)抑制に、降圧は極めて重要である。すなわち、2型糖尿病例を対象とした、低バイアスのランダム化比較試験(RCT)40報(10万354例)をメタ解析すると、収縮期血圧(SBP)が10 mmHg低値になるにしたがい、心血管イベントは「3.90/1,000人・年」、有意に減少していた(死亡も3.16/1,000人・年減少、JAMA 2015; 313: 603-615)。

 しかし、糖尿病例の血圧管理は難渋するといわれている。そこで必要となるのが、生活習慣改善への介入追加による降圧増強である。

 対象が高血圧例であれば、DASH食による降圧作用が報告されている (N Engl J Med 1997; 336: 1117-1124)。しかし、同試験では管理不良の糖尿病例は除外されていた。また、糖尿病例を対象にDASH食の降圧作用を比べたRCT3報では、2報が有意な降圧を認める一方、最大規模の1報は対照群と差を認めない(Hypertension 2021; 77: 265-274)。

 そこで、DASH食を糖尿病例向けに改変した「DASH4D食」が考案され、その降圧作用を2型糖尿病100例強で検討したRCTが6月9日、JAMA Intern Medに掲載された。著者は米・Johns Hopkins UniversityのScott J.Pilla氏らである。

 この研究では、糖尿病例の降圧では「なにを食べるか」より「ナトリウム(Na)制限」の方が重要であると示された。ただし、「Na制限」の目標値をめぐっては学会間で推奨に相違が存在する。その背景についても考察したい。

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宇津 貴史(うつ たかし)

医学系編集会社、広告代理店(編集職)とメディカルトリビューン(記者)を経て、2001年からフリーランス。新聞系メディアなどに記名、匿名で執筆を続ける。平日は原則として毎朝、最新論文をチェック(https://x.com/Office_j)。特定非営利活動法人・臨床研究適正評価教育機構(J-CLEAR)会員。会員向けニュースレター記事執筆、セミナーにおける発表などを担当。日本医学ジャーナリスト協会会員。共著に『あなたの知らない研究グレーの世界』(中外医学社)。