スウェーデン・Karolinska Institutetのノーベル委員会は昨日(10月6日)、2025年のノーベル生理学・医学賞を大阪大学特任教授の坂口志文氏、米・システム生物学研究所のMary E. Brunkow氏、米・Sonoma BiotherapeuticsのFrederick J. Ramsdell氏に授与すると発表しました。 授賞理由は、末梢性免疫寛容に関する発見。坂口氏は免疫応答を制御する内在性制御性T細胞(Treg)を発見、米国の2氏は自己免疫疾患に関わる遺伝子Foxp3を発見しました。坂口氏は、Tregの特異的分子としてCD25、Foxp3を同定し、Tregの異常が多様な免疫疾患の発症に関与していることを初めて証明(Nat Rev Immunol 2003; 3: 199-210)。これらの功績により、同氏は2003年の平成15年度持田記念学術賞を皮切りに、2008年に平成19年度上原賞、第13回慶應医学賞、2015年にカナダのガードナー国際賞、2017年にスウェーデンのクラフォード賞、2020年にはドイツのロベルト・コッホ賞などを受賞しています。 2003年12月4日発行のMedical Tribune紙は、財団法人持田記念医学薬学振興財団の平成15年度助成金等受賞式の模様を紹介。坂口氏(当時・京都大学再生医科学研究所生体機能調節学教授)は「制御性T細胞の発見と免疫疾患におけるその役割の解明」をテーマに持田記念学術賞を受賞しました。当時受賞者は、「TGF-βスーパーファミリーのシグナル伝達機構とその生物学的作用に関する研究」の宮園浩平氏(当時東京大学大学院分子病理学教授)。 記事では、Tregの発生・機能の分子的メカニズムの解析を行ったところ、CD25+CD4+Tregの発生・機能発現を制御するマスター制御遺伝子が、ヒトの遺伝性自己免疫・アレルギー・炎症性疾患の原因遺伝子であるFoxp3であることを突き止めたという、研究の概要を紹介しています。 2008年2月21日発行号では、坂口氏が財団法人上原記念生命科学財団の平成19年度上原賞を受賞したこと、同年10月16日発行号では、第13回慶應医学賞を受賞したことを伝えています。 Tregを標的とする治療法をめぐっては、キメラ抗原受容体Treg(CAR-Treg)療法や光免疫療法などのがん免疫療法をはじめ、多様な疾患領域で研究・開発が進んでいます。坂口氏が昨日の記者会見で「受賞を機に研究が進み、臨床応用が進展することを望んでいる」と語ったように、さらなる治療・予防への展開が期待されます。 (「Medical Tribuneが報じた昭和・平成」企画班)