第一三共は本日(10月20日)、欧州臨床腫瘍学会(ESMO 2025)で発表された臨床試験5件の概要を公表した。内訳は、抗HER2抗体薬物複合体トラスツズマブ デルクステカン(T-DXd、商品名エンハーツ)が2件、抗TROP2抗体薬物複合体ダトポタマブ デルクステカン(Dato-DXd、ダトロウェイ)、抗CDH6抗体薬物複合体raludotatug deruxtecan(R-DXd、開発コードDS-6000)、抗TA-MUC1抗体薬物複合体(DS-3939)が各1件。 T-DXd 術前療法後に乳房または腋窩リンパ節に浸潤性残存病変を有する再発リスクが高いHER2陽性乳がん患者を対象とした国際第Ⅲ相試験DESTINY-Breast05において、トラスツズマブ エムタンシン(T-DM1)群と比べてT-DXd群で浸潤性疾患の再発/死亡リスクが53%低下し、有意かつ臨床的に意義のある改善を示した(関連記事「エンハーツ、術前療法後のHER2陽性乳がんPⅢで主要評価項目達成」)。 また、再発リスクが高いHER2陽性早期乳がん患者を対象とした国際第Ⅲ相試験DESTINY-Breast11において、病理学的完全奏効率はドキソルビシンとシクロホスファミド投与後にパクリタキセル+トラスツズマブ+ペルツズマブ併用療法(THP療法)を行う現在の標準治療群の56.3%に対し、T-DXd投与後にTHP療法を行う群では67.3%と、有意かつ臨床的に意義のある改善が得られた(関連記事「エンハーツ、HER2陽性早期乳がんの術前療法で標準治療に勝る」)。 Dato-DXd 国際第Ⅱ相試験 TROPIONPanTumor03のサブ試験7件(子宮内膜がん、胃がん、前立腺がん、卵巣がん、大腸がん、尿路上皮がん、胆道がん)のうち、局所進行・転移性の尿路上皮がんを対象としたサブ試験の発表。シスプラチン不適応例の一次治療において、Dato-DXdとPD-1/TIGIT二重特異性抗体rilvegostomig(開発コードAZD2936)の併用群では客観的奏効率が68.2%、病勢制御率は95.5%とだった。 さらに、同社は抗Nectin-4抗体微小管阻害薬複合体エンホルツマブ ベドチン+PD-1阻害薬ペムブロリズマブ併用療法による治療中または治療後に病勢進行が認められた局所進行・転移性尿路上皮がん患者を対象に、Dato-DXdとプラチナ製剤ベースの化学療法(カルボプラチンまたはシスプラチン)の併用療法を検討するTROPION-Urothelial03を開始したことも発表した。 R-DXd 再発性のプラチナ製剤抵抗性卵巣がん、原発性腹膜がん、卵管がんを対象とした第Ⅱ/Ⅲ相試験REJOICE-Ovarian01のうち、3つの用量(4.8mg/kg、5.6mg/kg、6.4mg/kg)におけるR-DXdの有効性および安全性を評価する第Ⅱ相試験の結果が発表された(関連記事「ラルドタツグ デルクステカン、FDAが画期的治療薬に指定」) 。主要評価項目である客観的奏効率は50.5%で、臨床的意義のある有効性を示した。 DS-3939 DS-3939は、抗TA-MUC1抗体を基盤とし同社のDXd抗体薬物複合体(ADC)技術を活用して創製された6番目のADC。 日本を含むアジア、欧州および北米における局所進行・転移性・切除不能の固形がん患者を対象とした国際第Ⅰ/Ⅱ相相臨床試験において、進行性固形がん(非小細胞肺がん、膵管腺がん、尿路上皮がん、卵巣がん、胆道がん、大腸がん、乳がん)患者64例における同薬の安全性および予備的有効性を評価した。安全性は投与量1.0~10.0mg/kgにおいて、用量制限毒性としてグレード3の貧血(1例)、腹痛(1例)、グレード4の血小板減少症(1例)が認められた。 予備的有効性について、完全奏効は1例(卵巣がん)、部分奏効は10例(卵巣がん5例、非小細胞肺がん4例、乳がん1例)に認められ、病勢安定は39例だった。