週刊論文ウォッチ

でき過ぎ? 透析例へのEPA・DPA投与で予後改善

重篤血管系イベント予防効果を検証したPISCES試験

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感染症ビジョナリーズ 感染症ビジョナリーズ

〔編集部から〕本連載は、主要医学ジャーナルに目を通すことを毎朝の日課としている医学レポーターが、SNS上での反響も踏まえ、毎週特に目を引いた論文5本をピックアップ。うち1本にフォーカスします。11月3~9日の1週間に公開された論文からフォーカスしたのは「透析患者の予後」に関する論文。その他のピックアップ論文は、末尾をご覧ください。

心血管疾患は感染症を上回る透析例最大の死因

 透析例の多くが心血管疾患(CVD)で死亡する。

 2023年の日本透析医学会「わが国の慢性透析療法の現況」によると、 日本人透析患者の29.4%は「心不全、脳血管障害、心筋梗塞」が死因だった。

 これらCVDによる死亡は経時的に緩やかな減少傾向を示しているものの、いまだに感染症死(22.7%)を上回る。

 ではどうすれば透析例のCVDを抑制できるか。「透析」そのものに関する試みは多くなされている一方、それ以外の介入についてはエビデンスが乏しい(Rev Cardiovasc Med 2023; 24: 185)。

 そのような状況下で11月7日、血液透析例へのn-3系脂肪酸である「エイコサペンタエン酸(EP)・ドコサペンタエン酸(DPA)サプリ」がCVDを含む重篤血管系イベントを著明に減少させたとのランダム化比較試験(RCT) PISCESが、11月7日、N Engl J Medに掲載された(米国腎臓学会で同時報告)。

 著者はカナダ・ University of Health NetworkのCharmaine E Lok氏ら。

 果たして本当に、血液透析例に対する「福音」となるのか。同試験に付された論説は、慎重な対応を呼び掛けている。

宇津 貴史(うつ たかし)

医学系編集会社、広告代理店(編集職)とメディカルトリビューン(記者)を経て、2001年からフリーランス。新聞系メディアなどに記名、匿名で執筆を続ける。平日は原則として毎朝、最新論文をチェック(https://x.com/Office_j)。特定非営利活動法人・臨床研究適正評価教育機構(J-CLEAR)会員。会員向けニュースレター記事執筆、セミナーにおける発表などを担当。日本医学ジャーナリスト協会会員。共著に『あなたの知らない研究グレーの世界』(中外医学社)。

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