週刊論文ウォッチ

超高齢者への経口抗凝固薬の「益」と「害」

デンマーク・心房細動5万例超の解析

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感染症ビジョナリーズ 感染症ビジョナリーズ

〔編集部から〕本連載は、主要医学ジャーナルに目を通すことを毎朝の日課としている医学レポーターが、SNS上での反響も踏まえ、毎週特に目を引いた論文5本をピックアップ。うち1本にフォーカスします。11月17~23日の1週間に公開された論文からフォーカスしたのは「超高齢者の心房細動治療」に関する論文。その他のピックアップ論文は、末尾をご覧ください。

超高齢者はRCTにほとんど登録されていない

 心房細動(AF)の検出率は加齢に従い上昇する。米国データでは80歳以上の11人中1人にAF診断歴があった(JAMA 2001; 285: 2370-2375)。脳梗塞リスクが一定以上であればAF例は原則、経口抗凝固薬(OAC)の適応と考えられる。しかし、超高齢AF例を対象としたエビデンスは乏しい。超高齢者はAFに対するOACの有用性を証明したランダム化比較試験(RCT)に、ほとんど登録されていないためだ。

 そこで、デンマーク・Copenhagen UniversityのCasper Binding氏らは、国内レジストリデータから超高齢AF 5万例超を抽出し、OACによる「益」と「害」を調べた。結果は11月18日、Eur Heart Jに掲載された。

 5万例を超える超高齢AFでOACの有用性を検討したデータは「今回が初」だとBinding氏は記している。それだけに、今回の結果の確実性には自信があるようだ。

 しかし、この結果をどう評価するか、見解は分かれるかもしれない。

宇津 貴史(うつ たかし)

医学系編集会社、広告代理店(編集職)とメディカルトリビューン(記者)を経て、2001年からフリーランス。新聞系メディアなどに記名、匿名で執筆を続ける。平日は原則として毎朝、最新論文をチェック(https://x.com/Office_j)。特定非営利活動法人・臨床研究適正評価教育機構(J-CLEAR)会員。会員向けニュースレター記事執筆、セミナーにおける発表などを担当。日本医学ジャーナリスト協会会員。共著に『あなたの知らない研究グレーの世界』(中外医学社)。

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