92カ国・4,451の抄録がアクセプトされた今年のESC。最新の臨床試験結果が発表されるHot Line Sessionを中心に、注目の演題を取材しました。 セマグルチド、AF関係なく肥満HFpEFの症状改善 肥満は、肥満を伴う左室駆出率(LVEF)の保たれた心不全(HFpEF)および心房細動(AF)の発症と進行において重要な因子である。HFpEF患者を対象にGLP-1受容体作動薬セマグルチドの有効性と安全性を検討した第Ⅲ相プラセボ対照ランダム化比較試験(RCT)STEP-HFpEFプログラムでは、セマグルチド投与により心不全関連の症状改善が見られた。米・University of Missouri-Kansas City School of MedicineのMikhail N. Kosiborod氏は、同プログラムの二次解析の結果を欧州心臓病学会(ESC 2024、8月30日~9月2日)で発表。AFの有無やAFの病型にかかわらず、セマグルチドは肥満HFpEFの症状を改善すると報告した。... 二次性僧帽弁閉鎖不全症にMitraClipが好成績 心不全に併発する二次性僧帽弁閉鎖不全症(MR)に対し、MitraClipを用いた経皮的僧帽弁形成術が期待されているが、これまで薬物療法のみの従来療法とMitraClipを比較した試験で一貫した成績は得られていない。ドイツ・Charite University HospitalのStefan D. Anker氏らは、中等症~重症の二次性MR患者を対象にランダム化比較試験RESHAPE-HF2を実施。薬物療法単独群に比べ、MitraClip群で心不全入院と心血管死の複合リスクが有意に低下したとの結果を欧州心臓病学会(ESC 2024、8月30日~9月2日)で報告した。... 光干渉断層撮影ガイド下のPCIで転帰向上 経皮的冠動脈インターベンション(PCI)施行時の光干渉断層撮影(OCT)ガイド使用について、妥当性に関するエビデンスは少ない。韓国・Yonsei University College of Medicine, Severance Cardiovascular HospitalのSung-Jin Hong氏、Byeong-Keuk Kim氏らは、複雑病変に対する薬剤溶出ステント(DES)によるPCI施行予定患者を対象にOCTガイドと血管造影ガイド(対照群)の有効性を比較する多施設非盲検ランダム化優越性試験OCCUPIを実施。その結果、「対照群と比べ、OCT群では1年時の心血管イベント発生リスクが有意に低かった」と欧州心臓病学会(ESC 2024、8月30日~9月2日)で報告した。... 非心臓大手術前もRAS阻害薬は継続可 非心臓大手術の術前におけるレニン・アンジオテンシン系(RAS)阻害薬の休薬の妥当性に関するエビデンスは少ない。米・University of California, San FranciscoのMatthieu Legrand氏らは、非心臓大手術施行例を対象に術前のRAS阻害薬休薬または継続投与の有効性を検討する多施設非盲検ランダム化比較試験Stop-or-Notを実施。その結果、「非心臓大手術前において、RAS阻害薬の継続による術後合併症リスクの上昇は認められなかった」と欧州心臓病学会(ESC 2024、8月30日~9月2日)で報告した。... ブトリシランが心アミロイドーシスに有効 英・University College LondonのMarianna Fontana氏らは、トランスサイレチン(TTR)型家族性アミロイドポリニューロパチー(TTR-FAP)治療薬で低分子干渉RNA(siRNA)薬のブトリシラン(商品名アムヴトラ)について、トランスサイレチン型心アミロイドーシス(ATTR-CM)に対する有効性と安全性を検証する第Ⅲ相二重盲検プラセボ対照ランダム化比較試験HELIOS-Bを実施。プラセボ群に比べブトリシラン群で全死亡と心血管イベント再発の複合リスクが有意に低下し、ATTR-CMの標準治療となる可能性があるとの結果を欧州心臓病学会(ESC 2024、8月30日~9月2日)で報告した。... 心筋梗塞後のβ遮断薬、長期継続が有益 心筋梗塞後にβ遮断薬を長期投与すべきかどうかは、議論が分かれる。フランス・Sorbonne UniversityのJohanne Silvain氏らは、β遮断薬投与中の心筋梗塞既往患者を対象にβ遮断薬の中止または継続後の転帰を比較する非盲検非劣性ランダム化比較試験ABYSSを実施。その結果、β遮断薬継続群と比べ、中止群で主要評価項目(死亡、心筋梗塞、脳卒中、心血管入院の複合)のイベント発生リスクが高かったと欧州心臓病学会(ESC 2024、8月30日~9月2日)で報告した。... HFpEFにフィネレノンが有効 ステロイド型選択的ミネラルコルチコイド受容体拮抗薬(MRA)は、左室駆出率(LVEF)が低下した心不全(HFrEF)患者の死亡リスクを低下させるが、LVEFが保たれた心不全(HFpEF)患者に対する有効性は確立されていない。米・Harvard Medical SchoolのScott D. Solomon氏らは、LVEF 40%以上の心不全患者を対象に、非ステロイド型MRAフィネレノンの有効性と安全性を検証する二重盲検プラセボ対照ランダム化比較試験FINEARTS-HFを実施。その結果、主要評価項目である心不全悪化と心血管死の複合イベント発生リスクは、プラセボ群に比べてフィネレノン群で有意に低かったと欧州心臓病学会(ESC 2024、8月30日~9月2日)で報告した。... 2024年開催学会レポート一覧に戻る