性機能障害に関する研究の進歩と普及を目指す日本性機能学会。今年は主に男女別に見た性機能に関する演題を中心に取材し、オルガズムと精液の質との関係、出産を契機とする女性の性交問題などを取り上げました。 抗うつ薬イミプラミン、射精障害治療に有望か 現在、射精障害に適応を有する薬剤がないため治療法の選択が問題となる。札幌医科大学泌尿器科の伊藤歌織氏らは、射精時の内尿道口閉鎖不全により精液が膀胱内に流入する逆行性射精または精液排出不全(emission less)の患者に対する三環系抗うつ薬(TCA)イミプラミンの有効性を後ろ向きに検討。その結果、「イミプラミンによる治療で良好な転帰を認めた」と第34回日本性機能学会(9月13~15日)で報告した。... 性交頻度が年1回になると改善希望が低下 春日井市民病院(愛知県)泌尿器科部長の奥村敬子氏は、国内の成人女性を対象に実施した性機能に関する調査から、性交頻度が1年に1回に減少するとセックスレスを改善したいと思わなくなるなどの結果を、第34回日本性機能学会(9月13~15日)で報告した。性交頻度が3カ月に1回以上だと、改善を希望する女性は半数超に上ることも同調査で示された。... 不同意性交等被害者、年間17万人超と推定 昨年(2023年)の内閣府の調査報告によると、国内の不同意性交等被害(旧強制性交等被害)について、警察に相談した女性はわずか1.5%であるという。警察での認知件数は2,611件だが、実際は年間約17万4,000人にも及ぶと考えられる。総合母子保健センター愛育病院(東京都)名誉院長の安達知子氏は、第34回日本性機能学会(9月13~15日)で「被害の認知件数は氷山の一角にすぎない」と指摘。性犯罪・性暴力被害者救済のためのワンストップ支援センター(以下、支援センター)への公的支援と防止策の重要性を訴えた。... オルガズム低下で精液所見が悪化 泌尿器科の実臨床において同一患者で精液所見に相違が見られることは珍しくないが、精液所見とオルガズムとの関連を検討した研究は少ない。協和会第二協立病院(兵庫県)ARTセンターの近藤宣幸氏らは、男性不妊患者125例を対象にオルガズム低下が精液所見に及ぼす影響を後ろ向きに検討。その結果、「オルガズム高度低下例では、正常例に比べて運動率および総運動精子数が有意に低下していた」と第34回日本性機能学会(9月13~15日)で報告した。... 女性のオルガズム障害にヒアルロン酸! 女性医療クリニックLUNAグループは今年(2024年)1月、フェムゾーン(腟・外陰部)に関する悩みについて、女性の泌尿器科医および婦人科医が診療するフェムゾーン美容外来を開設した。現時点で女性のオルガズム障害への治療法は限られているものの、腟レーザーの施行や腟ヒアルロン酸注入が有効であった自験例について、同グループLUNAネクストステージ院長の中村綾子氏が、第34回日本性機能学会(9月13~15日)で報告した。... 日本人男性の性機能、若年・中年ともに低下 日本人男性の性機能障害をめぐっては、昨年(2023年)に日本性機能学会が発表した『性機能障害全国実態調査』(以下、23年調査)によって、20歳代における性的活動への意欲および性機能の顕著な低下が浮き彫りとなった。三樹会泌尿器科病院(札幌市)院長の佐藤嘉一氏らは、同調査と1991年に札幌医科大学泌尿器科が行った性機能調査(以下、91年調査)を比較することで日本人男性における性交頻度・性機能の経時的推移を検討。... 2024年開催学会レポート一覧に戻る