近年治療法の進展が見られる左室駆出率(LVEF)が保たれた心不全(HFpEF)への介入方法や、免疫チェックポイント阻害薬投与に伴う心筋障害の早期発見ポイントを取材しました。また、経カテーテル大動脈弁置換術(TAVI)について、新規の術式として注目されているTAV in TAV(再TAVI)の有効性を検討した研究も紹介しています。 日本人AF合併心不全にジゴキシンが有用 桜橋渡辺未来医療病院(大阪市)副院長兼心臓血管センター心不全科長の岩永善高氏は、厚生労働省の匿名医療保険等関連情報データベース(NDB)を用いて心房細動(AF)合併・非合併心不全患者におけるジゴキシン、β遮断薬使用と予後の関連を検討し、第72回日本心臓病学会(9月27~29日)で報告。「AF合併心不全患者ではジゴキシンの使用と良好な予後との関連が示された。β遮断薬でも同様だったが、超高齢者や女性ではこの関連が消失または減弱していた」と述べた。... 免疫CP阻害薬でCK上昇は重症心筋炎の早期マーカー 免疫チェックポイント阻害薬 (ICI)は免疫関連有害事象(irAE)として重篤な心筋障害を生じることがあり、バイオマーカーや心電図によるスクリーニングが推奨されている。国際医療福祉大学循環器内科教授の田村雄一氏は、ICI投与患者126例を前向きにスクリーニングした結果を第72回日本心臓病学会(9月27~29日)で報告。「重症心筋炎症例でのみ心筋トロポニン(cTn)-I に先行してクレアチンキナーゼ(CK)の上昇が認められ、CK上昇はICIによる重症心筋炎の早期バイオマーカーとなる可能性が示唆された」と述べた。... 人工弁周囲逆流にTAV in TAVが有効 経カテーテル大動脈弁置換術(TAVI)後に高頻度に生じる人工弁周囲逆流(paravalvular leak;PVL)は予後不良因子であるため対策が重要になる。群馬大学病院循環器内科の長坂崇司氏は、留学先の米・Cedars-Sinai Medical CenterにおいてTAVI後のPVLに対し、バルーン拡張型人工弁SAPIENを用いたTAV-in-TAV(再TAVI)を施行した連続31例を後ろ向きに検討。その結果、「PVLに対するバルーン拡張型弁による再TAVI後の2年全死亡率は16.1%と、許容できる治療成績が得られた」と第72回日本心臓病学会(9月27~29日)で発表した。... 動脈硬化・血管不全に基づくHFpEF治療 左室駆出率(LVEF)が保たれた心不全(HFpEF)の背景には、多様な病態が存在する。山梨大学内科学講座循環器内科教室准教授の中村貴光氏は、動脈硬化や血管不全の研究を長年行ってきた立場から、HFpEFの進行を抑制する最新の治療戦略について第72回日本心臓病学会(9月27~29日)で発表。血管硬化に改善効果のある新薬が有望との見解を示した。... 2024年開催学会レポート一覧に戻る