大腸がん診療は薬物治療、外科的治療のいずれにおいても新たな局面を迎えています。化学療法導入時の管理に有用な指標として肝容積に着目した報告、患者への負担についてロボット支援下手術と腹腔鏡下手術を比較検討した報告の他、予後予測に関して『大腸癌取扱い規約 第9版』から削除された項目を再評価した報告などを取材しました。 pT1大腸がんへの内視鏡切除、外科手術と差なし 内視鏡非治癒切除に相当するpT1大腸がんに対し、『大腸癌治療ガイドライン』では外科手術が推奨されている。しかし高齢者では、内視鏡切除を選択するケースがある。広島大学大学院消化器内科学の岸田圭弘氏らは、80歳以上の高リスクpT1大腸がん患者を対象に、内視鏡切除の治療成績および予後を外科手術と比較。内視鏡切除でも再発や原病死が少なかった一方、Prognostic nutritional index(PNI)45未満では予後不良との成績を第102回大腸癌研究会(1月30~31日)で発表した。・・・ 大腸がんの予後予測にDR分類が有用 大腸がんの予後予測をめぐっては、浸潤部の間葉系組織(がん微小環境)ががんの増殖および進展に深く関わることから、浸潤先進部の線維性がん間質(desmoplastic reaction)に基づく分類(DR分類)が予後予測の新たな指標として注目されている。しかし、『大腸癌取扱い規約 第9版』では線維性がん間質分類の評価項目が削除されており、現在の日常診療ではがん間質に着目する機会は少ない。・・・ 大腸がんへのロボットvs. 単孔式、どっちが低侵襲? 日本では、大腸がんに対するロボット支援下手術が急速に増加している。腹腔鏡下手術と比べ、ロボット支援下手術は開復移行、出血量、術後合併症が少ないことが知られる一方、手術時間が長く、切開孔が大きいことが指摘されている。埼玉医科大学国際医療センター消化器外科専任講師の石山泰寛氏は、右側結腸がんに対する単孔式腹腔鏡下手術とロボット支援下手術の術後の侵襲の程度について検討。・・・ 化学療法導入時のリスク予測に肝容積が有用 進行大腸がんに対する化学療法では導入早期の有害事象管理が重要だが、リスク予測に有用なバイオマーカーについて一貫した見解は得られていない。日本医科大学病院消化器外科病院講師の岩井拓磨氏らは、肝容積(肝volume)と化学療法による早期有害事象の関連に着目。進行大腸がん患者107例を対象に解析した結果、「肝volumeは大腸がん患者に対する化学療法導入早期のリスク予測に有用である可能性が示された」と第102回大腸癌研究会(1月30~31日)で報告した。・・・ 2024年開催学会レポート一覧に戻る