冬季の気温上昇がプラーク破綻の引き金に 心血管疾患の発症が季節と気温が影響することはよく知られており、気温低下の2~6日後に急性冠症候群(ACS)リスクが高まるという大規模研究の報告もある(J Am Coll Cardiol 2024; 84: 1149-1159)。しかし、気温と冠動脈プラーク破綻の関連はあまり検討されていない。広島市民病院循環器内科の見越正礼氏らは、急性心筋梗塞(AMI)患者を対象に季節ごとの気温パラメータと冠動脈プラーク破綻の関連について検討し、その結果を第89回日本循環器学会(3月28~30日)で発表。・・・ Sotatercept、日本人PAHで有効性と安全性示す 新クラスのアクチビンシグナル伝達阻害薬sotaterceptは、昨年(2024年)11月に成人の肺動脈性肺高血圧症(PAH)治療薬として国内での製造販売承認申請が行われた。国立病院機構岡山医療センター副院長の松原広己氏は第89回日本循環器学会(3月28~30日)で、承認申請の根拠となった第Ⅲ相非盲検単群試験の結果を発表。・・・ 看護師主導型支援で慢性心不全患者の在宅ケアが改善 日本では外来で療養指導を実施している患者のうち、45.0%が心疾患であるにもかかわらず、心不全管理においては退院後の不十分なセルフケアに伴う再入院の増加が大きな課題となっている。海外では退院後早期の看護師主導型支援により患者のセルフケア行動が改善するとの報告があるものの(J Am Coll Cardiol 2019; 74: 1966-2011)、国内では看護師主導型支援は診療報酬に乏しく、計画的な実施が難しい。日本看護協会と神戸大学大学院保健学研究科看護学領域教授の宮脇郁子氏らは第89回日本循環器学会(3月28~30日)で、国内の慢性心不全外来患者に対する看護師主導型支援の有効性を検討した結果を発表。・・・ 高齢AF患者の予後に肥満パラドックス 心血管病患者では、過体重や肥満よりも低体重で予後不良となる「肥満パラドックス」が報告されている。しかし、心房細動(AF)患者を対象に肥満パラドックスを調査した大規模な予後研究は多くない。順天堂大学浦安病院循環器内科の牧正彬氏らは、国内のAF患者を対象とした大規模レジストリ2件(RAFFINE study、SAKURA AF Registry)・7,134例のデータを統合し、体格指数(BMI kg/m2)と予後との関連を解析。「日本のAFレジストリでは75歳以上の高齢患者で、低体重群に比べて過体重群や肥満群の死亡リスクが有意に低く、肥満パラドックスが観察された」と第89回日本循環器学会(3月28~30日)で報告した。・・・ 日本のHFrEF患者の突然死、減少傾向に 国際医療福祉大学循環器内科学講師の福岡良磨氏らが実施したWest Tokyo Heart Failure(WET-HF)レジストリ研究によると、日本の左室駆出率が低下した心不全(HFrEF)患者の突然死発症率は、2011~21年の約10年間で虚血性および非虚血性心不全患者のいずれも低下傾向にあること、さらに虚血性心不全例と突然死のリスク上昇が有意に関連していることが示された。第89回日本循環器学会(3月28~30日)で発表した。・・・ 急性心筋梗塞の影に抗リン脂質抗体症候群? 昭和医科大学藤が丘病院循環器内科の石井優紀氏らは、抗リン脂質抗体症候群(APS)が判明した急性心筋梗塞(AMI)患者2例を経験。「非典型的なAMI例ではAPSを考慮する必要がある」と第89回日本循環器学会(3月28~30日)で指摘した。・・・ 心不全GL、HFpEF治療の推奨にSGLT2阻害薬とMRA 今年(2025年)3月28日、日本循環器学会/日本心不全学会合同ガイドラインとして『2025年改訂版心不全診療ガイドライン』が公開された。今回の改訂では2021年に日本心不全学会、米国心不全学会、欧州心臓病学会傘下の心不全学会が合同で策定した心不全の国際定義「Universal Definition and classification of heart failure」に準じて心不全の定義や分類が統一された他、予防的治療やLVEFが軽度低下した心不全(HFmrEF)/LVEFの保たれた心不全(HFpEF)の薬物治療にSGLT2阻害薬および非ステロイド型選択的ミネラルコルチコイド受容体拮抗薬フィネレノンの推奨が加えられた。改訂版GLの合同研究班班員で国立循環器病研究センター心不全部部長の北井豪氏が、第89回日本循環器学会(3月28~30日)で改訂点について詳説した。・・・ ACE阻害薬併用でHIF-PH阻害薬の効果減弱 心不全の治療に汎用されるアンジオテンシン変換酵素(ACE)阻害薬は、赤血球増殖を抑制し貧血を惹起することが知られている。豊橋ハートセンター(愛知県)薬局長の芦川直也氏らは、腎性貧血治療薬である低酸素誘導因子プロリン水酸化酵素(HIF-PH)阻害薬ダプロデュスタットを新規投与した慢性腎臓病(CKD)を伴う心不全患者105例を約6カ月間後ろ向きに検討。「ACE阻害薬の併用により、ダプロデュスタットの有効性が減弱する可能性が示唆された」と第89回日本循環器学会(3月28~30日)で報告した。・・・ 心筋症の新薬マバカムテン、国内P3で好結果 選択的心筋ミオシン阻害薬マバカムテンは、今年(2025年)3月27日に閉塞性肥大型心筋症(HOCM)を効能効果として日本国内での製造販売承認を取得し、3月28日公表の『2025年改訂版 心不全診療ガイドライン』でもHOCM治療薬としての推奨が記載された。国立循環器病研究センター心不全・移植部門長の泉知里氏は第89回日本循環器学会(3月28~30日)で、日本人HOCM患者を対象にマバカムテンの有効性と安全性を検討した第Ⅲ相非盲検単群試験HORIZON-HCMの54週時点の解析結果を発表。・・・ TGCVは成人発症の新クラスの心血管疾患 性脂肪蓄積心筋血管症(TGCV)は、心筋や冠動脈にトリグリセライド(TG)が蓄積し、重症心不全・びまん性冠動脈疾患を来す希少疾患で、細胞内のTG分解障害が同疾患の本態である。第89回日本循環器学会(3月28~30日)の初日に刊行された『2025年改訂版心不全診療ガイドライン』(GL)では、TGCVが初めて取り上げられた。TGCVの発見者で大阪大学大学院中性脂肪学共同研究講座特任教授の平野賢一氏は「TGCVは成人発症の新しいクラスの心血管疾患であり、日本に加え海外でも調査を要する」と同学会で指摘した。・・・ 2025年開催学会レポート一覧に戻る