視覚の重要性が増している情報化社会においては、デジタルデバイスなどによる眼に対するストレスも増加の一途をたどっています。QOLを維持するために眼の健康は非常に大切。今回は、話題のVEGF阻害薬であるアフリベルセプト8mgやブロルシズマブの研究、近視の進行抑制効果が期待できるレッドライト治療、さらにはウェルナー症候群の症例報告など、幅広く取材しました。 甲状腺眼症にテプロツムマブ、患者ニーズも考慮 昨年(2024年)、バセドウ病悪性眼球突出症(甲状腺眼症)の眼球突出を改善する日本初のヒト型抗インスリン様成長因子-1受容体(IGF-1R)モノクローナル抗体製剤テプロツムマブが承認された。兵庫医科大学眼科・眼形成再建外科非常勤講師の三村真士氏は、第129回日本眼科学会(4月17~20日)で同薬による眼球突出の改善効果などを解説した。・・・ 加齢黄斑変性へのブロルシズマブ、6週間隔注射の成績は? 血管内皮増殖因子(VEGF)阻害薬ブロルシズマブは、新生血管型加齢黄斑変性(nAMD)に対する有効性が示されている一方で、他剤と比べ眼内炎症(IOI)のリスクが高いとの指摘がある。nAMD治療の導入期には、ブロルシズマブ硝子体内注射(IVBr)を4週間隔で3回施行することが推奨されているが、糖尿病黄斑浮腫(DME)を対象とした第Ⅲ相試験KESTREL/KITEでは導入期としてIVBrを6週間隔で5回行ったところ、nAMDを対象とした第Ⅲ相試験HAWK/HARRIERよりもIOI関連の有害事象発生率が低かった。大阪公立大学大学院視覚病態学教授の本田茂氏は、nAMDに対する導入期としてIVBrを6週間隔で3回施行した症例を6カ月間追跡し、IOI発生などとの関連を後ろ向きに検討。結果を第129回日本眼科学会(4月17~20日)で報告した。・・・ 加齢黄斑変性、アフリベルセプト8mg切り替えの益は? 血管内皮増殖因子(VEGF)阻害薬アフリベルセプトの8mg製剤は、新生血管型加齢黄斑変性(nAMD)への、より長期的・持続的な有効性が期待されている。高濃度となったことで、投与間隔を延長しても既存の2mg製剤に対する非劣性が報告されている。しかし、他剤からの切り替えによるメリット/デメリットに関する知見は不足している。大阪大学眼科学の原千佳子氏は、自施設において他のVEGF阻害薬で治療中のnAMD患者を対象に、アフリベルセプト8mgへの切り替え後の滲出性変化の有無などを検討。結果を第129回日本眼科学会(4月17~20日)で報告した。・・・ 〔MT Case Reports〕増加傾向?Tattoo関連ぶどう膜炎2例 Tattoo関連ぶどう膜炎とは、入れ墨のインクへの異物反応により発症する、肉芽腫性炎症を伴うサルコイドーシスに類似した前部/汎ぶどう膜炎を呈するまれな疾患である。徳島大学大学院眼科学分野准教授の柳井亮二氏は第129回日本眼科学会(4月17~20日)で、Tattoo関連ぶどう膜炎と診断された20歳代男性および40歳代女性の症例を報告した。・・・ 〔MT Case Reports〕若年性白内障からウェルナー症候群を早期発見 ウェルナー症候群は思春期以降に発症する遺伝性早期老化症候群で、悪性腫瘍や動脈硬化を呈して50歳代半ばまでに死亡するケースもある。しかし近年、早期介入による死亡率の低下やQOLの改善が示唆されており、早期診断・早期治療の重要性が増している。国際医療福祉大学眼科教授/千葉大学眼科特任教授の忍足俊幸氏は第129回日本眼科学会(4月17~20日)で、若年性白内障に加え音声異常が認められたことを契機に遺伝子検査を実施し、ウェルナー症候群の診断に至った20歳代男性の症例を紹介した。・・・ 近視眼へのレッドライト治療で良好な成績 近視の進行抑制を目的としたレッドライト治療が注目されている。東京科学大学眼科は、小児および成人の強度近視例に対するレッドライト治療の有効性と安全性を検討。今回、小児において0.05mm以上の右眼軸長短縮が46.7%に認められたとの結果を、同科の李惇馥氏が第129回日本眼科学会(4月17~20日)で報告した。・・・ 医師が疑似体験、視野障害例の自動車運転 現在、眼疾患患者の視野と運転能力を評価する運転外来が、国内に4カ所ある。外来で用いられているのがドライビングシミュレーターで、得られた結果に基づき医師が、視野障害による影響や安全運転に必要な注意点などを患者に助言する。東京都で開催された第129回日本眼科学会(4月17~20日)では、ドライビングシミュレーターを設置。視野障害がある状態での運転を疑似体験できるため、好評を博した。・・・ 2025年開催学会レポート一覧に戻る