乳がん治療は、薬剤開発の進展により治療成績が向上している一方、治療費が上昇しており患者負担の大きさや社会保障制度への影響が課題となっています。経済毒性をテーマとしたシンポジウムはほぼ満席で、医師の関心の高さが伺えました。今回、「どこまでガイドラインに従うべきか?」といった非常に挑戦的なテーマのシンポジウムも取材しました。リアルワールドデータを基にガイドラインとの隙間にどう向き合うべきか、患者の価値観を尊重した選択肢が求められています。 〔動画で解説〕アジア vs. 欧米、乳がん診療はこう違う! 第33回日本乳癌学会のメインテーマは「アジアと欧米の違い Bridging across the Pacific」。現地参加した東京女子医科大学乳腺外科の塚田弘子氏に、同学会の印象の他、聴講した乳がん検診や治療、乳がん診療におけるガイドラインの役割などのセッションについてご紹介いただきました。・・・ HR+HER2-乳がん1次治療はCDK4/6阻害薬か?単剤か? HR+HER2-進行・再発乳がんの一次治療は、内分泌単剤療法と比べて無増悪生存の有意な延長が示されていることから、ホルモン療法薬+CDK4/6阻害薬の併用療法が標準治療となっている。しかし、全生存の有意な延長は二次治療では証明されているが、一次治療では示されていない。また近年、治療に伴う毒性(経済毒性、身体毒性、時間毒性)が重要視されており、内分泌単剤療法はこれらに優れる可能性がある。長崎大学大学院移植・消化器外科講師の久芳さやか氏は、CDK4/6阻害薬併用療法に対する内分泌単剤療法の治療開始から化学療法までの期間である化学療法回避期間の非劣性を検討する多施設共同後ろ向き観察研究を実施。その結果を発表した。・・・ 乳がん治療薬、70歳以上で先発品処方が増加 日本では、70歳以上の大半が1~2割の自己負担割合で医療を受けられているが、今般その引き上げが議論されつつある。自己負担額の高さは受療行動を減少させることが知られるが、乳がん診療への影響は明らかでない。東京大学大学院乳腺内分泌外科学/臨床疫学・経済学(現・国立がん研究センターがん対策研究所医療政策部室長)の小西孝明氏らは、匿名医療保険等関連情報データベース(NDB)を用いて全国の乳がん治療薬の処方実態を解析。その結果、70歳以上で先発品の処方割合が増加する傾向が示されたことを第33回日本乳癌学会(7月10~12日)で発表した。・・・ 2025年開催学会レポート一覧に戻る