日本の眼科4学会(眼感染症、眼炎症、コンタクトレンズ、涙道・涙液)の合同総会であるフォーサム2025では、非常に興味深い多くのケースレポートが発表されます。今回は、飲食時に片眼から過剰な流涙が起こる「ワニの涙症候群」など、まれな疾患や症例にフォーカスして取材を行ってきました。 ウパダシチニブが両壊死性強膜炎に奏効 関節リウマチ(RA)などの自己免疫疾患に伴う強膜炎の治療では、メトトレキサート(MTX)などの従来型抗リウマチ薬を用いるが、難治例にはTNFα阻害薬やIL-6阻害薬が有効との指摘がある。また、抗リウマチ薬からJAK阻害薬ウパダシチニブへの切り替えにより非感染性強膜炎が寛解したとの報告もある。防衛医科大学校眼科学講座の中井俊作氏は、フォーサム2025横浜(第58回日本眼炎症学会、7月11~13日)で、生物学的製剤に治療抵抗性を示したRA関連の両壊死性強膜炎においてウパダシチニブが奏効した40歳代女性例を紹介した。・・・ アデノウイルス結膜炎の治療薬候補 アデノウイルス(AdV)結膜炎は、主に流行性角結膜炎(EKC)と咽頭結膜熱(PCF)が知られており、発症頻度が高く感染力も強いが眼科領域で使用できる治療薬が存在しないことが問題視されている。福岡大学眼科学講師の川村朋子氏は、2022年に発売されたヨウ素・ポリビニルアルコール(PAI)点眼薬(商品名サンヨード点眼液)のAdV結膜炎への効果をin vitroで検討し、結果をフォーサム2025(7月11〜13日)の学術奨励賞(三井賞)受賞講演で報告した。PAI点眼薬は同研究で使用された全てのAdV型に効果を示した。・・・ ワニの涙症候群に対し涙腺切除を施行した2例 ワニの涙症候群(crocodile tears syndrome;CTS)は、飲食時に片眼から過剰な流涙が起こるまれな疾患で、顔面神経麻痺やベル麻痺に伴い発症することが多い。治療はボツリヌス毒素(BTX-A)注射を検討するが、難治例では外科的治療も考慮する。オキュロフェイシャルクリニック大阪(大阪市)副院長の佐藤陽平氏はフォーサム2025横浜(第13回日本涙道・涙液学会、7月11~13日)で、CTSに対し涙腺切除を施行した80歳代および60歳代女性の2症例を紹介した。・・・ 2025年開催学会レポート一覧に戻る