近年、神経免疫疾患の病態解明は急速に進んでおり、それに伴い分子標的薬をはじめとする新規治療薬が次々と開発されています。これらの進歩に伴い、実臨床においては多様な病態や個々の患者背景を考慮した治療薬の使い分けが新たな議論の焦点となっています。さらに、最近ではがん免疫治療に伴う神経疾患が報告されるようになり、神経内科医が他科から対応を求められる機会が増加しています。今回は、重症筋無力症の分子標的薬の使い分けや神経系の免疫関連有害事象および傍腫瘍性神経症候群に関する演題について取材しました。 ロザノリキシズマブ、重症筋無力症の至適症例は? 全身型重症筋無力症(gMG)は近年、分子標的薬が相次いで上市されたことから、治療の選択肢が大きく広がっている。しかし、各薬剤の効果の違いや使い分けなどについては十分なエビデンスが示されていない。近畿大学脳神経内科学の寒川真氏は、抗Fc受容体(FcRn)抗体ロザノリキシズマブの特徴と至適症例について第37回日本神経免疫学会(8月8~9日)で解説。臨床試験データや自験例を踏まえた上で、同薬の導入についての考え方を示した。・・・ 重症筋無力症治療の新星nipocalimab、強みは 難治性の全身型重症筋無力症(gMG)に対する分子標的治療として、これまでに抗補体療法と抗胎児性Fc受容体(FcRn)療法の二系統6種類が開発されている。今年(2025年)4月に、新たな抗FcRn薬nipocalimabが米食品医薬品局(FDA)に承認され、国内でも今年1月にgMG治療薬として承認申請された。大阪大学大学院生体病態情報科学講座准教授の久保田智哉氏は、FDA承認の根拠となったVivacity-MG3試験の報告を基に、nipocalimabの特徴と想定される至適症例について第37回日本神経免疫学会(8月8~9日)で解説した。・・・ 傍腫瘍性かirAEか?ICI治療後の神経疾患の実態は 免疫チェックポイント阻害薬(ICI)治療の普及に伴い、近年さまざまな神経系の免疫関連有害事象 (irAE)が報告されるようになった。神経系irAEは、脳神経内科医が日常的に経験する神経疾患とは異なる臨床像を呈する一方、他科から対応を求められる機会が増加している。東京都立神経病院副院長の鈴木重明氏は、ICI治療における神経系irAEの実態や傍腫瘍性神経症候群との違いなどについて第37回日本神経免疫学会(8月8~9日)で解説。「ICI治療が広がるにつれ、まれな疾患であるランバート・イートン筋無力症候群(LEMS)を含めた傍腫瘍性神経症候群の発症が増加する可能性がある」と注意を促した。・・・ 2025年開催学会レポート一覧に戻る