団塊の世代全員が75歳以上の後期高齢者となる「2025年問題」の1つとされる褥瘡。現在、見直しがなされている褥瘡の定義、褥瘡と紛らわしい皮膚疾患との鑑別やうつ伏せ状態で発見された熱中症患者に発生した褥瘡、医療・介護人員が不足する中で期待が高まっているロボット介護機器の有用性などの演題を取材しました。 褥瘡と紛らわしい皮膚疾患、盲点を解説 褥瘡との鑑別を要する皮膚潰瘍はさまざまある。明治国際医療大学臨床医学講座教授の中西健史氏は、鑑別を妨げる意外な盲点について、第27回日本褥瘡学会(8月29~30日)で解説した。医師は塗布した亜鉛華軟膏を落とす際に看護師に任せ、病室を退出しがちだが、落とす際の剪断力が肛門周囲に生じた亀裂を悪化させていたケースなどを紹介。同氏は、病変の背後にある状況に対応する必要性を指摘した。・・・ 褥瘡予防にロボット介護機器が有用! 日本では超高齢化の進展に伴い医療・介護人員が不足する中、ロボット介護機器への期待が高まっている。褥瘡診療においても、「感じる、考える、動く」という3要素を備えたロボット介護機器の活用が進んでいる。横浜市立大学大学院医学研究科成人看護学分野准教授/国立健康危機管理研究機構(JIHS)システム基盤整備局医療情報管理部主任研究員(JST Boost)の高橋聡明氏は、褥瘡の予防やケアにおけるロボット介護機器の有用性、新たな取り組み、今後の展望などについて第27回日本褥瘡学会(8月29~30日)で解説した。・・・ こんなにある!褥瘡との鑑別要する皮膚疾患 褥瘡の好発部位に発生する皮膚疾患には、褥瘡と類似したものから全く異なるものまでさまざまある。そのため、皮膚科医には適切な病変の評価が求められる。倉繁皮ふ科医院(前橋市)院長の倉繁祐太氏は、褥瘡の好発部位に発生した皮膚疾患12種類を列挙。第27回日本褥瘡学会(8月29~30日)で解説し、安易に褥瘡と誤認しないよう注意を促した。・・・ 重度褥瘡治療、失禁管理が重要 重度褥瘡の治療において、D3(皮下組織までの損傷)以上、皮膚欠損4cm以上などの基準を満たす例は再建手術の適応となる。第27回日本褥瘡学会(8月29~30日)において、埼玉医科大学形成外科准教授の佐藤智也氏は、排泄コントロールが困難で坐骨部褥瘡の再発と再建手術を繰り返し、ストーマ造設により褥瘡治癒に至った脊髄損傷の症例を提示し、褥瘡治療における失禁管理の重要性について解説した。・・・ 学会が褥瘡の「新」定義を確定へ 日本褥瘡学会による褥瘡の定義に医療関連機器褥瘡が含まれておらず、定義と実臨床での認識に齟齬がある。これを踏まえ同学会用語集検討作業部会(以下、作業部会)は定義の見直しを行っている。医療関連機器褥瘡が必ずしも骨と皮膚表面の間にある軟部組織に発生しないため、従来定義から「骨」を除外するなどの新定義案を、作業部会担当理事で群馬大学大学院皮膚科教授の茂木精一郎氏が第27回日本褥瘡学会(8月29~30日)で発表した。今後、パブリックコメントを募り、正式に発表する予定だ。・・・ 熱中症の救急搬送例に多発褥瘡、注意を! 今年(2025年)は気温40℃を超えるなど、記録的な猛暑に見舞われた。熱中症と褥瘡は異なる病態だが、熱中症で意識障害を来すと体位変換ができず褥瘡のリスクが高まる。熊谷総合病院(熊谷市)形成外科の深井孝郎氏は、独居高齢者で褥瘡を来した熱中症の救急搬送事例を第27回日本褥瘡学会(8月29~30日)で報告。短期間で発症する熱中症例への対応が今後の課題だと指摘した。・・・ 2025年開催学会レポート一覧に戻る