2023年、日本整形外科スポーツ医学会と日本関節鏡・膝・スポーツ整形外科学会が発展的に統合し、設立されたのが日本スポーツ整形外科学会です。今回で3回目となった学術集会では、トップアスリートに関連した症例紹介はもちろん、多血小板血漿(PRP)療法など最先端医療に関する研究についても取材しました。 人工膝関節全置換術におけるロボットの可能性 人工膝関節全置換術(TKA)をめぐっては、術後の機能回復に個人差が見られることから至適アライメントや靭帯バランス、関節面形状などについて議論がある。近年登場した手術支援ロボットは術後機能向上への貢献が期待される一方、中長期成績や費用効果面での課題が指摘されている。高松赤十字病院(高松市)整形外科第二整形外科部長の浜田大輔氏は日本スポーツ整形外科学会2025(9月12~13日)で、自験例などを提示しながら従来法と手術支援ロボットの比較、自施設での取り組みを紹介。TKAにおける手術支援ロボットの有用性および今後の可能性について発表した。・・・ 膝蓋腱炎に対するPRP療法、奏効の条件と限界 膝蓋腱炎(ジャンパー膝)はバスケットボール、バレーボール、陸上競技などジャンプ動作を多用する競技で発生しやすい。第一選択は保存療法で、病態に応じてさまざまな治療が行われるが、中でも多血小板血漿(PRP)療法は最先端の再生医療として注目され、疼痛緩和および機能改善が報告されている。一方で、効果の個人差が大きいとの指摘もある。稲城平尾整形外科クリニック(東京都)の清水勇樹氏は、難治性膝蓋腱炎に対するPRP療法の奏効例と不奏効例を分ける要因および、体外衝撃波治療(ESWT)や簡易動注療法血管内治療(Transcatheter Arterial Micro-Embolization;TAME)との併用の有用性について検討。結果を、日本スポーツ整形外科学会2025(9月12~13日)で発表した。・・・ ピッチャーに特異的な難病?黄色靭帯骨化症とは 黄色靭帯骨化症(OLF)とは、黄色靭帯が異常に肥厚、骨化し、脊柱管を後外側から狭窄することで脊髄や神経根を圧迫する病態であり難病に指定されている。下位胸椎に好発し大半は中高年で発症。アスリートでは野球選手に多く見られ、症例の全てが投手という特異性の高い疾患だが詳細は明らかでない。福島県立医科大学整形外科学講座講師/同大学スポーツ医学講座特任教授の加藤欽志氏は日本スポーツ整形外科学会2025(9月12~13日)で、OLFに対する手術例(自験例11例を含む)などを報告。「OLFは高レベルの野球選手において鑑別診断として常に念頭に置くべき疾患だ」と述べ、特徴や自施設での取り組みについて発表した。・・・ 「モモカン」で大腿部コンパートメント症候群を発症 コンパートメント症候群は、区画内圧の上昇に伴う筋肉内細動脈の血行障害により筋や神経組織が機能障害を起こす病態で、処置が遅れると筋肉壊死や神経麻痺に至ることもある。急性型は多くの筋が存在する前腕や下腿に多く見られ、大腿部での発症は比較的まれとされている。公立藤田総合病院(福島県)スポーツ・膝関節センターセンター長の吉田勝浩氏は日本スポーツ整形外科学会2025(9月12~13日)で、試合中の大腿部打撲、いわゆる「モモカン」により大腿部コンパートメント症候群を発症した30歳男性プロサッカー選手の症例を紹介した。・・・ 2025年開催学会レポート一覧に戻る