日本発、骨代謝研究のブレークスルー

RANKLは骨吸収だけではなく骨形成も制御

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研究の背景:驚愕・羨望のサイエンスレベルの高さ

 私は性格が悪いので友達がいない。

 母校の大学病院には長く在籍したが友人はほとんどいなかった。その中での稀有な友人が、本論文の著者の病院薬剤部の先生方であった。彼らとのサイエンスの話はとても楽しかったことを覚えている。その教室から、世界の骨代謝研究のブレークスルーとも言える論文が発表された(Nature 2018:561;195-200)。ただ、前もって断わっておくが、薬学の第一線研究者の論文なので、ド基礎である。

 若いころから新しモノ好きで傲慢な私は、最先端のベーシックサイエンスを運動器医療に取り入れてやろうと意気込んでいて、入局してすぐのころに当時まだ黎明期にあった分子生物学をちょっとだけ囓った経験がある。マニアティスの『Molecular Cloning』をオペ室の隅で読んでいたのはもう30年以上前である。

 今回の論文を読んだときには、そのサイエンスレベルの高さに驚愕し、ナンチャッテ分子生物学者の私にとっては、とても羨ましかった。というわけで、読者の興味も顧みずに紹介する。一応、図をつくったので、参照しながら読んでいただければ幸いである(文末にはナンチャッテ業界批判も)。

川口 浩(かわぐち ひろし)

1985年、東京大学医学部医学科卒業。同大学整形外科助手、講師を経て2004年に助教授(2007年から准教授)。2013年、独立行政法人地域医療機能推進機構(JCHO)東京新宿メディカルセンター脊椎脊髄センター・センター長。2018年、東京脳神経センター整形外科・脊椎外科部長。臨床の専門は脊椎外科、基礎研究の専門は骨・軟骨の分子生物学で、臨床応用を目指した先端研究に従事している。Peer-reviewed英文原著論文は300編以上(総計impact factor=1,510:2018年4月現在)。2009年、米国整形外科学会(AAOS)の最高賞Kappa DeltaAwardをアジアで初めて受賞。2011年、米国骨代謝学会(ASBMR)のトランスレーショナルリサーチ最高賞Lawrence G.Raisz Award受賞。座右の銘は「寄らば大樹の陰」「長いものには巻かれろ」。したがって、日本の整形外科の「大樹」も「長いもの」も、公正で厳然としたものであることを願っている。

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