「高齢」はスタチン中止の理由にならない

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感染症ビジョナリーズ 感染症ビジョナリーズ

研究の背景:高齢者のコレステロール低下療法の意義には疑問が残されていた

 10年ほど前、わが国ではコレステロール低下療法に疑義を唱える主張がなされ、臨床の現場に混乱が生じたことがあった(関連記事「検証・日本脂質栄養学会コレステロールガイドライン」「"醜い泥仕合を仕かけただけ" 日本脂質栄養学会の再反論を考察する」)。

 その後、エゼチミブやPCSK9阻害薬を用いた種々の臨床研究の結果から、コレステロール低下療法の意義はあらためて確立された(N Engl J Med 2015; 372: 2387-2397、関連記事「やはりコレステロールは下げるべき」)。ただ、このときにも、「コレステロールを下げることは良い。だが、いかに、そして誰に、が大切だ」(Lowering LDL Cholesterol is good,but how and in whom)とされていた(N Engl J Med 2015; 372: 1562-1564)。

 特に、後期高齢者においてはコレステロール低下療法の一次(初発)予防効果は明らかでないとされ、日本動脈硬化学会の『動脈硬化性疾患予防ガイドライン2017年版』では、後期高齢者に対しては"主治医の判断で個々の症例に対応する方針"とされている。

 こうした状況下、臨床の現場で問題となってきたのは、「後期高齢者になったら、初発予防目的のスタチンは中止すべきかどうか」である。前期高齢者までは自信をもって投与していたスタチンが、75歳を超えたらその患者に対して有益なのかどうか分からないというのだ。患者や家族から「薬を減らしてほしい」と言われたときにどう対応すべきなのか、私自身、答がなかった。

 そんな中、観察研究ではあるが、プロペンシティスコアでマッチングングさせたデザイン〔ランダム化比較試験(RCT)と同様の解析をする目的で、注目する項目以外の臨床特性をそろえる観察研究における統計解析手法:Stat Med 2007; 26: 20-36〕で、65歳以上を対象にスタチンを中止した人と継続した人の心血管アウトカムを比較検討した研究結果がJAMA Netw Open2021; 4: e2113186)に掲載された。

 それによると、スタチンの中止は致死性および非致死性の心血管アウトカムの増加と関連していたという。2020年のLancetに掲載された、高齢者におけるコレステロール低下療法の意義を支持する2つの研究結果も併せてご紹介したい。

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