チャパレ出血熱とアウトブレーク調査

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感染症ビジョナリーズ 感染症ビジョナリーズ

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© Adobe Stock ※画像はイメージです

研究の背景:新しいウイルス性出血熱、チャパレ出血熱

 「事の真相」にはいつも興味がある。患者の体内で何が起きているのか、事の真相を突き止めるのが「診断」だ。だから、内科医としての日々の診療には強い関心がある。

 同様に、アウトブレーク調査もまた、公衆衛生領域での「事の真相」を追求する営為であり、いつも強い興味を感じている。表面的な「患者の広がり」の奥に隠れている真相に迫るプロセスは、特にそれが質の高いプロセスであればとても勉強になるし、大いに知的好奇心を刺激される。

 NEJMのような一流誌でも、ときどきそういった質の高いアウトブレーク調査が報告される。今回、ご紹介するのは、南米におけるチャパレ出血熱のアウトブレークとその調査である。

 ボリビアにはボリビア出血熱という疾患があり、これは1963年に原因ウイルス(マチュポウイルス)が発見されている。見つかったのは、首都ラパスの北東に位置するベニ県だ。

 2003年、ベニより南に位置するコチャバンバ県で複数の出血熱が見つかり、これが新しいアレナウイルス科マンマレナウイルス属であるチャパレウイルス(CHAPV)が原因だと判明した。しかし、その後チャパレ出血熱(CHHF)は報告されていない。

 CHAPVは、齧歯類やその排泄物からヒトに感染すると推測されているが、レザボア(自然宿主)は見つかっていない。ヒト・ヒト感染の報告はない。

 ヒト・ヒト感染する出血熱としてはフィロウイルス科のエボラウイルス病、マンマレナウイルス属ではラッサ熱が有名だ。どちらもアフリカに多い疾患で、ヒトの尿、母乳、精液、髄液から検出され、ヒト・ヒト感染することが知られている。一方、新世界のマンマレナウイルス属においてはヒト・ヒト感染の報告はこれまでなかった。

 2019年、ボリビア保健省は原因不明の出血熱のクラスターを報告した。クラスターは北西部のカラナビから発生し、首都ラパスにまで至った。このアウトブレークを調査したのが、今回紹介する論文である。

Loayza Mafayle R, Morales-Betoulle ME, Romero C, Cossaboom CM, Whitmer S, Alvarez Aguilera CE, et al. Chapare Hemorrhagic Fever and Virus Detection in Rodents in Bolivia in 2019. N Engl J Med. 2022 Jun 16;386(24):2283-2294.

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