クライオ生検は医師の働き方改革にも貢献

「まずクライオ生検」が当たり前の時代に

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感染症ビジョナリーズ 感染症ビジョナリーズ

研究の背景:観察範囲が狭いクライオ生検、診断精度は?

 呼吸器疾患は多岐にわたり、その鑑別は困難を極める。胸部CTで特徴的な陰影を確認して、おそらくこの疾患であろうと当たりを付けることは重要だが、確実性を増すためには気管支鏡検査がよく行われる。

 肺の病態を知る方法としては、気管支肺胞洗浄(bronchoalveolar lavage;BAL)、肺生検の2つがある。肺生検には、気管支鏡で行われる経気管支肺生検、外科手術で行われる外科的肺生検(surgical lung biopsy;SLB)の2つがある。経気管支肺生検は、これまで小さな鉗子で行われていたが、見える組織像の範囲が狭過ぎて病態の把握が困難であった。そこで登場したのがクライオ生検である。現場ではクライオバイオプシーあるいはtransbronchial lung cryobiopsy(TBLC)と呼ばれている。これは、肺組織を凍結させて採取する生検法である。

 気管支鏡を使ったクライオ生検の方法は実にユニークであり、呼吸器内科医以外の医師が見ると驚くであろう。従来の経気管支肺生検は、気管支鏡の鉗子口というチャネルに鉗子を通して行うのが一般的であった。これは他の内視鏡検査でも同様である。しかし、クライオ生検は肺組織を凍結させるが故に、検体が大き過ぎるため、内視鏡の鉗子口を検体が通過できない。そのため、プローブ先端で採取した凍結したままの検体をカメラごと抜かざるをえない(写真)。

写真. クライオ生検の実際

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(倉原優氏提供)

 ゆっくり引き抜くと気管支上皮が剝離してしまうことがあるため、勢いよく引き抜くことが重要となる。覚醒下でこの処置を行うことは不可能であり、基本的には鎮静下で気管チューブを通して行われる。

 アクロバティックとはいえ、このクライオ生検の方がSLBよりも侵襲度は低い。そのため、現在日本の呼吸器診療では、肺生検ではクライオ生検が主役になりつつある。しかし、クライオ生検はSLBと比べると、組織検体が小さいという難点がある。観察範囲が狭くなることから、適切な診断に至らないのではという懸念があった。

 そこで、クライオ生検を用いた診断戦略と、SLBのみの診断戦略を比較したオランダの多施設共同研究COLDが行われた(Lancet Respir Med 2024年4月16日オンライン版)。

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