心理療法の児童虐待への有効性を示す新研究

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研究の背景:新設された「心理支援加算」、児童虐待も対象に

 2024年度の診療報酬改訂で、通院精神療法に「心理支援加算」という項目が新設された。これは、心的外傷に起因する症状を有する患者に、精神科を担当する医師の指示を受けた公認心理師が支援を行った場合に算定されるものである。日本で初めての国家資格としての心理職である公認心理師制度は2017年に施行されたが、公認心理師による心理療法はこれまで保険診療の中には位置付けられていなかった。そんな中で今回、公認心理師による「心理支援加算」が点数化されたことは大きな一歩である。

「心理支援加算」の対象は「心的外傷に起因する症状」とされているため、心的外傷後ストレス障害(PTSD)だけが対象のようにも見えるが、疑義照会では「心理支援の対象患者は、必ずしもPTSDの診断基準を満たす必要はない」と明記されている。

 精神科の臨床場面で、心的外傷、特に児童虐待などの小児期の逆境体験を持つ者は、臨床的実感としてもかなり多い。気分障害圏〔国際疾病分類第10版(ICD-10)のF3〕では40.2%、いわゆる神経症圏(ICD-10のF4)では60.3%にも及ぶとの報告もある(Perm J 2018; 22: 18-001)。

 しかしながら、これらの小児期の逆境体験については、後ろ向き評価による症例対照研究ではその後の精神的アウトカムとの関連を示すオッズ比(OR)が高いにもかかわらず、前向き評価によるコホート研究では、はるかにORが低い、という乖離が以前から指摘されていた。

 今回取り上げる研究は、その要因について検討したシステマチックレビューとメタ解析である(JAMA Psychiatry 2024年5月1日オンライン版)。

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