メトホルミンは食事1時間前の内服がよい?!

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研究の背景:内服薬の効果は内服方法で大きく異なることがある

 リベルサス(商品名)という内服薬がある。セマグルチド〔注射薬ならオゼンピック(商品名)またはウゴービ(商品名)〕という物質をサルカプロザートナトリウム(SNAC)という包材に包むことで胃からの吸収を可能にしたGLP-1受容体作動薬である。

 どうしても注射薬を忌避する患者に対して、GLP-1受容体作動薬を投薬できるようになったのは革命的であり、少なからぬ患者に大いに役立っている。ただ、この薬剤は本来、消化管では消化酵素により消化(分解)されてしまうために注射せざるをえないペプチド薬を、強引に内服できるようにしたために、内服方法の条件が厳格に定められている。すなわち、起床後すぐに何も飲食せずに、リベルサスだけを50~120mLの水で服用し、その後少なくとも30分は一切飲食をしないというものである。

 これは、SNACがセマグルチドの消化分解を最大限に抑制できるように胃内pHを調整するためである。データを見る限りでは、内服後30分よりも120分の飲食禁止の方がよいし(Diabetes Ther 2021; 12: 1915-1927)、内服前についても6時間超は飲食していない方がよいし(Clin Pharmacokinet 2023; 62: 635-644)、服用に用いるのは必ず真水でなければならず炭酸水ではよろしくないらしい(pHの変化により、吸収に影響が出るらしい)。

 ここまで極端ではないにしても、実は古典的な糖尿病治療薬であるメトホルミンについても内服の方法によって治療効果に差異があり、実は食事の1時間前に内服した方が血糖改善効果を最大にできそうだという論文が欧州糖尿病学会の機関誌に報告された(Diabetologia 2024; 67: 1260-1270)。メトホルミンの添付文書には「1日500mgより開始し、1日2~3回に分割して食直前または食後に経口投与する」と記載があり、食事1時間前との記載はない。(保険診療上のルールの遵守は必要であるが)ことによると服薬指導の際のヒントになるかもしれないと考え、ご紹介したい。

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