知っているようで知らない「造影剤過敏症」への適切な対応

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【研究の背景】造影剤過敏症があれば、造影剤は使用してはいけないのか?

 造影剤使用に伴い、何かしらの症状が誘発される反応を「アレルギー」と捉える医師は多いのではないか。造影剤使用に伴う各種症状の誘発はアレルギーだけでは説明できないため、厳密に言えば「過敏症」である。もちろん特異的IgE抗体や感作型Tリンパ球が関連する、いわゆるアレルギーが関与しているケースもある。しかし、高浸透圧の造影剤が急速に血管内に流入することによる反応や、造影剤のマスト細胞直接刺激に伴うヒスタミンを中心としたケミカルメディエーターの放出による症状もあり、造影剤使用中や使用直後に現れる軽度な症状は、これらに起因するとされる。そのため、マスト細胞の活性化が関与する疾患である気管支喘息ではコントロールがついていない場合、造影剤による副反応の頻度が約6~10倍高くなることはよく知られている。先生方も造影剤使用時には、問診で気管支喘息の有無を必ず確認するのではないだろうか。

 このように造影剤過敏症は多くの複合的な要因で発症する。ただし、造影剤使用中や使用直後にアナフィラキシーなどの重篤な症状を呈する場合、特異的IgE抗体が関連するⅠ型アレルギーの関与が示唆されている。低浸透圧かつ非イオン性のヨード造影剤は重篤な副反応の出現頻度が低いためよく使用されるが、それでも副反応の発生頻度は軽度なもので約1~3%、重篤なものは約0.04~0.004%程度と報告されている(Eur Radiol 2001; 11: 1267-1275)。

 また、造影剤過敏症の既往歴を有する患者における過敏反応を回避するための予防的前投薬に関しては、明らかな有効性を示すエビデンスがない。そのため全ての患者に対して予防的前投薬を積極的に用いることは推奨されておらず、世界的に統一した見解がなされていない。予防的前投薬として直前にステロイド点滴を施行した上で造影剤を使用する施設は少なくないとされているが、検査直前にステロイドのみを用いた予防策はシステマチックレビューで効果が否定されている(BMJ 2006; 333: 675)。予防的前投薬としてステロイドを使用する場合は効果に即効性が期待できないことから、少なくとも数時間以上前に投与する必要がある。

 ステロイドはマスト細胞の活性化やヒスタミン放出を阻害するのではなく、マスト細胞の数と組織のヒスタミン含有量を減少させる免疫の調整を行う薬剤であるため、即効性は期待できない。米国放射線医会(ACR)のステロイド前投薬に関するガイドラインでは、ステロイドに加えてヒスタミン(H1)受容体拮抗薬の使用を提案している。造影剤がマスト細胞を直接刺激することでヒスタミンが放出されることを踏まえれば、H1受容体拮抗薬の併用による症状抑制が期待できる。

 このように造影剤過敏症は身近にある問題にもかかわらず、適切に管理することが難しい側面がある。今回は、An algorithm for the management of radiocontrast media hypersensitivity, 2024 update(Allergy 2024; 79: 2570-2572)をご紹介したい。

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