クローン病に有効なバイオ製剤はどっち?

リサンキズマブ vs. ウステキヌマブのランダム化比較試験SEQUENCEより

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研究の背景:悩ましいのは薬剤の適切な使い分け

 かつては入院、手術を繰り返し、まさに腸の難病そのものであったクローン病だが、抗TNFα抗体インフリキシマブが登場したことで治療成績は大きな変遷を遂げた。生物学的製剤は、栄養療法やステロイド、免疫調節薬から開始した上で、難治の場合にのみ使用することが標準であったが、近年では当初から導入するいわゆる"トップダウン"が望ましいとの報告が相次ぎ(Lancet Gastroenterol Hepatol 2024; 9: 415-427、関連記事「クローン病、トップダウン療法は標準治療か」)、クローン病治療において生物学的製剤の担う役割はいっそう大きくなっている

 このように、選択肢だけでなく投与の機会も増える中で、われわれ臨床医を悩ませるのがその適切な使い分けである。一部の悪性腫瘍に対する化学療法の選択において報告されているような、有用なバイオマーカーや遺伝子プロファイルなどの開発および解明が期待されるが、現在のところはまだ臨床応用はおろか、示唆するような結果もほとんどないのが本領域の現状である。

 では、全体として有効性に優れる薬剤はどれか。現在までのところ、薬剤間で優劣を問うような直接比較の研究は、クローン病に関しては生物学的製剤投与歴のない患者を対象として抗インターロイキン(IL)-12/23p40抗体ウステキヌマブ(UST)と抗TNFα抗体アダリムマブ(ADA)を直接比較したSEAVUE試験のみであり、同試験では薬剤間に差はなかった(Lancet 2022; 399: 2200-2211)。それ以外には、ネットワークメタ解析の手法を用いた間接的な比較が試みられてきたが(Lancet Gastroenterol Hepatol 2021; 6: 1002-1014Adv Ther 2023; 40: 3896-3911)、各試験間でデザインの差などを埋めるには限界があり、明確な答えは出ていない。

 今回は、このような状況の下で行われたUSTと新規抗IL-23p19抗体であるリサンキズマブ(RZB)を直接比較したランダム化比較試験SEQUENCEの結果を紹介したい(N Engl J Med 2024; 391: 213-223)。

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