トキシン陰性C. difficile感染症の自然歴は? 記述研究は臨床的に有用なデータの宝庫 参考になった 名の医師が参考になったと回答 記事をクリップ 記事をクリップして、あとでマイページから読むことができます Facebookでシェアする Xでシェアする Lineでシェアする (© Adobe Stock ※画像はイメージです) 研究の背景:感度の低いトキシン検査、陰性の何%が真のCDIを有するか 以前、どこかで書いたような気がするが、僕は記述研究が大好きである。まあ、どの研究が好きでどの研究が嫌い、というのは特にないのだけれど、不当にさげすまれることが多い記述研究や症例報告について、どうしても肩を持って擁護したくなってしまうのだ。判官贔屓である。 今回紹介するのは、そんな記述研究だ。感染症のトップジャーナルの1つ、"Clinical Infectious Diseases(Clin Infect Dis)"に載ったのだから大したものだ。やはり研究はリサーチクエスチョンとアイデアが大事である。 CDIはClostridioides difficile infectionのことで、要するに、昔「偽膜性腸炎」と呼ばれていた抗菌薬関連下痢症の1つだ...というと若干語弊があるが、まあ大体のところはこの説明で問題ない。 たいていの感染症がそうなのだが、「微生物の存在=感染症の診断」とは限らない。そこに存在していても、実際には病気を起こしていないことは多々あるからだ。便の中にメチシリン耐性黄色ブドウ球菌(MRSA)がいても、必ずしも「MRSA腸炎」とは呼んではいけないゆえんである。C. difficile が毒素をつくることによってCDIは発生するが、C. difficileには毒素を産生しないものもあり、その場合はCDIは起きない。菌の存在が疾患の診断とイコールで結べない(こともある)のはそのためだ。 核酸増幅検査(NAAT)はC. difficileの存在診断のためには感度も特異度も高いが、毒素産生の有無はNAATでは分からないため、過大評価の可能性はある。グルタミン酸デヒドロゲナーゼ(GDH)を用いた検査とトキシン検査を組み合わせる方法もあるが、GDH陽性、トキシン陰性のときは判断が難しい(NAATと同じ問題が起きる)。GDHの感度は80〜100%、特異度は84〜100%といわれ、トキシン検査の感度は45.5〜87%と高くない。 日本化学療法学会『Clostridioides difficile感染症診療ガイドライン2022』 米国では、NAATを行ってからトキシン検査をするという2ステップの検査が行われることが多い。このとき、NAAT陽性でトキシン検査陰性(NAAT+/トキシン−)の患者はどのような自然歴を持つのだろうか。感度の低いトキシン検査陰性で、何パーセントが真のCDIを有するのか。臨床的には興味深い命題である。 これを吟味した観察研究が今回紹介する論文だ。 Turner NA, et al. Natural History of Clostridioides difficile-related Disease Progression in the Two-Step Testing Era. Clin Infect Dis 2025; Jan 20: ciaf020. 参考になった 名の医師が参考になったと回答 記事をクリップ 記事をクリップして、あとでマイページから読むことができます Facebookでシェアする Xでシェアする Lineでシェアする ×