2型糖尿病診断の30年前から心血管リスク上昇? メタボリックドミノを止めるべし! 参考になった 名の医師が参考になったと回答 記事をクリップ 記事をクリップして、あとでマイページから読むことができます Facebookでシェアする Xでシェアする Lineでシェアする 研究の背景:2型糖尿病では心血管疾患が増えるが、診断前はどうか? 糖尿病の合併症として三大合併症(細小血管障害)と動脈硬化症(大血管障害)が知られている。うち、三大合併症については、血糖管理で発症を予防できることが早くから知られていたが(DCCT: N Engl J Med 1993; 329: 977-986、UKPDS33: Lancet 1998; 352: 837-853)、動脈硬化症については血糖管理だけで予防できるかどうかは定かではない(SGLT2阻害薬やGLP-1受容体作動薬は作用に多面性があるので、動脈硬化症予防効果があるとしても血糖管理を介したものなのかがはっきりしない)。 そして、UKPDS35によれば、HbA1cと合併症発症率との関係性は、動脈硬化症(心筋梗塞)において三大合併症よりもフラットになっている(BMJ 2000; 321: 405-412、図1)。つまり、糖尿病患者の動脈硬化症を血糖管理だけで予防しきるのは(少なくとも三大合併症に比較すると)難しいということである。 図1. UKPDS35で示されたHbA1cと合併症発症率との関係性 (BMJ 2000; 321: 405-412) その背景として、既に糖尿病予備軍の段階から動脈硬化症が始まっているということがあるのではないかと思われる。糖尿病の前段階ともいえるメタボリックシンドロームの診断基準作成の際、メタボリックシンドロームとは、内臓脂肪の蓄積を背景としてわずかな血糖・血圧・脂質の異常で大血管障害の易発症性を持っている病態であるとされたことを考えれば(日本内科学会雑誌 2005; 94: 794-809)、糖尿病予備軍の段階からの動脈硬化症発症とその予防を考える必要がありそうである。 このたび、糖尿病発症前後での心血管疾患の発症率を検討するという研究がJACC誌に報告され、なんと糖尿病発症の30年前から発症率の上昇が始まっているという恐ろしい結果が提示された(J Am Coll Cardiol 2024; 84: 2251-2259)。 正直に言えば、それは統計学の操作技術であって、動脈硬化症のリスクが上昇し始めるのは、せいぜい糖尿病発症の10年くらい前(正常血糖から糖尿病予備軍になるごろ)からなのではないか、という思いはあるのだが、未病対策・公衆教育の重要性を示すデータとしてご紹介したい。 参考になった 名の医師が参考になったと回答 記事をクリップ 記事をクリップして、あとでマイページから読むことができます Facebookでシェアする Xでシェアする Lineでシェアする ×