研究の背景:「20歳代前半でピーク、40歳ごろから低下」が従来の知見 みなさんは「肺機能」のピークは何歳だとお考えだろうか。肺機能のデータは、呼吸器疾患の診断や予後予測において極めて重要な指標である。 従来の知見では、肺機能は小児期にゆっくりと成長し、思春期に加速し、20歳代前半でピークに達した後、しばらくの間は安定期(いわゆるプラトー)を保ち、40歳ごろから加齢に伴う低下が始まるというモデルが受け入れられてきた。喫煙をしている人では急速に肺機能が低下し、そうでない人は緩やかに低下していくというものである(図1、Br Med J 1977; 1: 1645-1648)。 図1. FletcherとPetoが提唱した肺機能の生涯軌跡モデル (Br Med J 1977; 1: 1645-1648) ただ、客観的な実証データが不十分であった。 そこで、8つの一般住民ベースの国際コホートを統合した加速コホート設計を用い、1秒量(FEV₁)、努力性肺活量(FVC)、1秒率(FEV₁/FVC比)の生涯にわたる軌跡(トラジェクトリー)が再構築された(Lancet Respir Med 2025; 13: 611-622)。