「肺機能は何歳からどうなる」従来の常識覆る!?

臨床への影響大、加速コホート研究で明らかに

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感染症ビジョナリーズ 感染症ビジョナリーズ

研究の背景:「20歳代前半でピーク、40歳ごろから低下」が従来の知見

 みなさんは「肺機能」のピークは何歳だとお考えだろうか。肺機能のデータは、呼吸器疾患の診断や予後予測において極めて重要な指標である。

 従来の知見では、肺機能は小児期にゆっくりと成長し、思春期に加速し、20歳代前半でピークに達した後、しばらくの間は安定期(いわゆるプラトー)を保ち、40歳ごろから加齢に伴う低下が始まるというモデルが受け入れられてきた。喫煙をしている人では急速に肺機能が低下し、そうでない人は緩やかに低下していくというものである(図1Br Med J 1977; 1: 1645-1648)。

図1. FletcherとPetoが提唱した肺機能の生涯軌跡モデル

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Br Med J 1977; 1: 1645-1648)

 ただ、客観的な実証データが不十分であった。 そこで、8つの一般住民ベースの国際コホートを統合した加速コホート設計を用い、1秒量(FEV₁)、努力性肺活量(FVC)、1秒率(FEV₁/FVC比)の生涯にわたる軌跡(トラジェクトリー)が再構築された(Lancet Respir Med 2025; 13: 611-622)。

倉原 優 (くらはら ゆう)

国立病院機構近畿中央呼吸器センター内科医師。2006年、滋賀医科大学卒業。洛和会音羽病院での初期研修を修了後、2008年から現職。日本呼吸器学会呼吸器専門医、日本感染症学会感染症専門医、インフェクションコントロールドクター、音楽療法士。自身のブログで論文の和訳やエッセイを執筆(ブログ「呼吸器内科医」)。著書に『呼吸器の薬の考え方、使い方』、『COPDの教科書』、『気管支喘息バイブル』、『ねころんで読める呼吸』シリーズ、『本当にあった医学論文』シリーズ、『ポケット呼吸器診療』(毎年改訂)など。

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