研究の背景:ガイドライン改訂中、どうなるベンゾジアゼピン受容体作動薬の位置付け 以前、本連載で、不眠症の治療には、薬物療法よりも認知行動療法(CBT-I)の方が有効であるというネットワークメタ解析、そしてCBT-I全てのコンポーネントを行うのは実地臨床ではなかなか難しい一方で、CBT-Iの一要素である睡眠制限療法を、エキスパートというほどではない治療者が週1回、10~15分行うだけでも効果が期待できるとする研究をご紹介した(関連記事「『とりあえず睡眠薬』を見直そう!」)。 2014年に厚生労働科学研究班と日本睡眠学会が合同で策定した『睡眠薬の適正な使用と休薬のための診療ガイドライン』の改訂に向けて、日本睡眠学会、日本臨床精神神経薬理学会などの関連学会が合同で現在、準備を進めているという〔三島和夫、「睡眠薬の適正使用ガイドライン発出から10年間の不眠医療の動向と改訂版策定に向けての課題」、第121回日本精神神経学会(2025年)〕。この中で、不眠症の治療において睡眠薬、特にベンゾジアゼピン受容体作動薬がどのように位置付けられるのか、注目される。 〔編集部注〕ベンゾジアゼピン受容体作動薬:ベンゾジアゼピン系薬と非ベンゾジアゼピン系薬(いわゆるZ薬)を合わせた薬剤概念。後出のベンゾジアゼピン関連催眠薬(BSH)と同義である もし、ガイドラインにおいて、睡眠制限療法などが睡眠薬より前に行うべき治療として位置付けられれば画期的なことであり、ベンゾジアゼピン受容体作動薬依存となる患者が減ることにつながると期待される。 しかし、既にベンゾジアゼピン受容体作動薬の依存に陥ってしまっている患者に対しては、いったいどのようにアプローチしたらよいであろうか。 最近、ベンゾジアゼピン関連催眠薬(benzodiazepines and closely related sedative hypnotics;BSH)中止に関する注目論文が掲載されたので、見てみよう(BMJ 2025; 389: e081336)。