サブ解析で炙りだされたPolypharmacyの「害」

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研究の背景:ROCKET-AFという大規模試験

 ROCKET-AFは 2010年に学会(米国心臓協会学術集会:AHA)で発表され,2011年に論文化1)されている。主解析 (Main Analysis)の目的は,リバーロキサバンという非ビタミンK阻害経口抗凝固薬(NOAC)を検証し,その効果がワルファリンに対して非劣性注)であることを示した。

 そしてROCKET-AF試験のサブ解析がCirculation 2月号2)に発表された。Polypharmacyに関する話題を扱ったもので,端的に述べると,心房細動に対して脳梗塞の予防のために抗凝固薬を使うが,このときベースラインで使っているクスリが多ければ多いほど副作用(出血)が増す,というサブ解析の結果を示したものである。

図1. ベースラインでの使用薬剤の数に応じた出血イベントの発症率:ROCKET-AF試験に参加した患者の3分の2が実に5剤以上の薬剤を使用しており,そしてこの使用している薬剤が多ければ多いほど副作用(出血合併症)の発症率が高くなっていることがわかる

 結果そのものは非常に分かりやすく,これ以上の形でPolypharmacyによる診療上の「予期せぬ帰結」を明確に示したグラフには中々お目にかかれないだろう。ここでは,さらにその意味するところを薬理的な議論と臨床試験のサブ解析の扱いの双方の観点から取り上げてみたい。

香坂 俊(こうさか しゅん)

香坂 俊

慶應義塾大学 循環器内科専任講師,東京大学 公衆衛生学 (医療品質評価学講座) 特任准教授。 1997年に慶應義塾大学医学部を卒業。1999年より渡米,St Luke's-Roosevelt Hospital Center にて Resident ,Baylor College of Medicine Texas Heart Institute にて Fellow 。その後,2008年まで Columbia University Presbyterian Hospital Center にて循環器内科スタッフとして勤務。


帰国した後は,循環器病棟での勤務の傍ら主に急性期疾患の管理についてテキストを執筆〔「極論で語る循環器内科 第二版 」(丸善),「もしも心電図が小学校の必修科目だったら」(医学書院),「急性期循環器診療」(MEDSI)〕。2012年からは循環器領域での大規模レジストリデータの解析を主眼とした臨床研究系大学院コースを設置 (院生や研究生は随時募集中)。

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