健康寿命至上主義でよいのか

英国の研究成果を踏まえて日本の課題を考える

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感染症ビジョナリーズ 感染症ビジョナリーズ

研究の背景:国家戦略に位置付けられる健康寿命の延伸

 泣く子も黙る「健康寿命」の話題である。「健康寿命の延伸」は、わが国でも医療行政が最重要課題として掲げ続けてきた国家戦略である。しかし、その実態について自立レベルまで詳細に検討した研究は世界的にも少ない。

 CFAS(Cognitive Function and Ageing Studies)は、英国の地域高齢者を対象とした住民コホート研究で、その特徴は時代の異なる2つのフィールド研究(CFAS ⅠとCFASⅡ)を行い、背景と調査項目を一致させて比較している点である。これによって、英国における高齢者の健康状況の変遷を探索できる。

 そもそもCFAS Iは、1989~94年に英国6地域で65歳以上を対象に認知症有病率を予測した研究である。また、CFASⅡは同じ研究グループによって、そのうちのケンブリッジシャー、ニューカッスル、ノッティンガムの3つの地域について、2008~11年に同一方法で認知症有病率の予測値を調べたものである。

 今回取り上げる研究は、1991年と2011年の前記3地域における65歳以上の高齢者の自立度を比較して、英国における20年間の健康寿命の変遷を検討したものである(Lancet 2017;390:1676-1684)。

川口 浩(かわぐち ひろし)

1985年、東京大学医学部医学科卒業。同大学整形外科助手、講師を経て2004年に助教授(2007年から准教授)。2013年、独立行政法人地域医療機能推進機構(JCHO)東京新宿メディカルセンター脊椎脊髄センター・センター長。臨床の専門は脊椎外科、基礎研究の専門は骨・軟骨の分子生物学で、臨床応用を目指した先端研究に従事している。Peer-reviewed英文原著論文全299編(総計impactfactor=1,506:2017年11月14日現在)。2009年、米国整形外科学会(AAOS)の最高賞Kappa DeltaAwardをアジアで初めて受賞。2011年、米国骨代謝学会(ASBMR)のトランスレーショナルリサーチ最高賞Lawrence G.Raisz Award受賞。座右の銘は「寄らば大樹の陰」「長いものには巻かれろ」。したがって、日本の整形外科の「大樹」も「長いもの」も、公正で厳然としたものであることを願っている。

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