オピオイド鎮痛薬が感染を増やす

  • Facebookでシェアする
  • Medical Tribune公式X Xでシェアする
  • Lineでシェアする
感染症ビジョナリーズ 感染症ビジョナリーズ

研究の背景:注目される免疫抑制作用と感染リスク

 米国では現在、オピオイド鎮痛薬の乱用が深刻な問題になっている。大量摂取(overdose)と依存(dependency)は日本ではともに「中毒」と呼ばれるが、いずれも深刻な問題だ。

 僕が研修医になった1990年代は、「日本は遅れている。患者が痛がっていても麻薬鎮痛薬を全然使わない。制限が厳し過ぎる。米国を見ろ。患者にどんどんオピオイドを使って、ペインマネジメントがしっかりしている」と言われたものだ。ところが、現在ではそのオピオイドが米国での深刻な病の原因となっているわけで。日本はたいてい、米国の医療を良くも悪くも周回遅れで追いかけているので、早晩この問題は、対岸の火事から自らの問題に転じる可能性が高い。

 それはともかく、近年オピオイドの免疫抑制作用が注目されるようになってきた。免疫抑制が起きれば、当然次に考えるべきは感染リスクである。それを吟味したのが、今回紹介する研究だ。

Wiese AD, Griffin MR, Schaffner W, Stein CM, Greevy RA, Mitchel EF, et al. Opioid Analgesic Use and Risk for Invasive Pneumococcal Diseases: A Nested Case-Control Study. Ann Intern Med 2018; 168: 396-404.

岩田 健太郎(いわた けんたろう)

岩田氏

1971年、島根県生まれ。島根医科大学卒業後、沖縄県立中部病院、コロンビア大学セントルークス・ルーズベルト病院、アルバートアインシュタイン医科大学ベスイスラエル・メディカルセンター、北京インターナショナルSOSクリニック、亀田総合病院を経て、2008年より神戸大学大学院医学研究科教授(微生物感染症学講座感染治療学分野)・神戸大学医学部付属病院感染症内科診療科長。 著書に『悪魔の味方 — 米国医療の現場から』『感染症は実在しない — 構造構成的感染症学』など、編著に『診断のゲシュタルトとデギュスタシオン』『医療につける薬 — 内田樹・鷲田清一に聞く』など多数。

  • Facebookでシェアする
  • Medical Tribune公式X Xでシェアする
  • Lineでシェアする