新型コロナに高流量鼻カニュラ酸素はOK?

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研究の背景:賛否両論あり

 高流量鼻カニュラ酸素療法(HFNC:ネーザルハイフロー)は、通常酸素療法で酸素化が保てなくなったとき、鼻腔から加温加湿した大量の酸素を供給するデバイスである。以前は、通常酸素療法と挿管・人工呼吸管理の間に非侵襲的陽圧換気療法(NPPV)が存在するのみだったが、近年HFNCによって挿管を回避できる例が増えており、当院(国立病院機構近畿中央呼吸器センター)でも病棟でよく使用している。

 さて、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)において、HFNCを使用してもよいかどうか、当初意見が分かれた。賛成派は「マンパワーを要する挿管・人工呼吸管理を避けて、HFNCで乗り切れるならその方がよい」という見解。反対派は「HFNCによってエアロゾルが飛散するため、医療従事者にとって新型コロナウイルス(SARS-CoV-2)感染リスクが高い」というものである。

 日本呼吸器学会の見解(「COVID-19肺炎に対するHFNCの使用について」)では、HFNCが考慮できるのは陰圧個室、もしくは全体がレッドゾーンとなった病棟においてのみと記載されている(表1)。現場もこれを踏襲する形で、あくまでレッドゾーンで感染防御を行った状態でHFNCが適用されている。

表1. COVID-19肺炎に対するHFNCの使用について

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(日本呼吸器学会「COVID-19肺炎に対するHFNCの使用について」)

 今回、まとまった症例数のCOVID-19で、HFNCの有用性について検討した報告があったので紹介したい(Am J Respir Crit Care Med 2020年8月6日オンライン版)。

倉原 優 (くらはら ゆう)

国立病院機構近畿中央呼吸器センター内科医師。2006年、滋賀医科大学卒業。洛和会音羽病院での初期研修を修了後、2008年から現職。日本呼吸器学会呼吸器専門医、日本感染症学会感染症専門医、インフェクションコントロールドクター、音楽療法士。自身のブログで論文の和訳やエッセイを執筆(ブログ「呼吸器内科医」)。著書に『呼吸器の薬の考え方、使い方』、『COPDの教科書』、『気管支喘息バイブル』、『ねころんで読める呼吸』シリーズ、『本当にあった医学論文』シリーズ、『ポケット呼吸器診療』(毎年改訂)など。

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