上部胃がんへの噴門側切除術と全摘術、どちらがお得?

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研究の背景:既存の論文は後ろ向きで、前向き試験はない

 現在改訂作業が進められている『胃癌治療ガイドライン(第6版)』(日本胃癌学会)のパブリックコメント用の原案では、「早期上部胃がんに対して噴門側切除を弱く推奨する」と記載されている。術式の選択肢は、胃全摘術(TG)あるいは噴門側胃切除術(PG)だが、PG症例の方が術後のダンピング症状が少なく体重減少が少ないものの、逆流性食道炎が多いという報告が一般的である。また栄養学的には、PG症例の方がヘモグロビン値およびビタミンB12の低下が抑制されることが指摘されている。しかしながら、既存の論文は後ろ向き研究によるものであり、前向き試験のものはない。今回紹介する論文「Multicenter prospective trial of total gastrectomy versus proximal gastrectomy for upper third cT1 gastric cancer」(Gastric Cancer 2020年10月29日オンライン版)は、『胃癌治療ガイドライン(第6版)』改訂作業で評価の対象とした期限後に発表された論文であり、最新の「多施設」での「前向き」観察研究である点で、貴重な報告と思われる。

島田 英昭(しまだ ひであき)

東邦大学大学院消化器外科学・臨床腫瘍学教授、同大学医療センター大森病院がんセンター長。

1984年千葉大学医学部卒業、1991年同大学大学院医学研究科博士課程(外科系)修了。同年に渡米し、マサチューセッツ総合病院、ハーバード大学外科研究員として従事。帰国後、千葉大学病院助手、同大学講師大学院医学研究院講師(先端応用外科学)、千葉県がんセンター消化器外科主任医長を経て、2009年より現職。現在は、東邦大学大学院消化器外科学講座責任者・臨床腫瘍学講座責任者や同大学大森病院特定臨床研究審査委員会委員長を併任。

日本胃癌学会ガイドライン作成委員会委員、日本食道学会会誌編集委員会副委員長などを務める他、日本外科学会代議員、 日本消化器外科学会評議員、日本癌学会評議員、日本臨床外科学会評議員、 日本免疫治療学会理事、日本分子腫瘍マーカー研究会副代表幹事、外科分子細胞治療研究会世話人・代表幹事など多数の学会の活動にも携わる。Ann Gastroenterol Surg誌、Esophagus、Gastric Cancer誌、Ann Thorac Cardiovasc Surg誌、Digestive Surgery誌、Surgery Today誌、J Hepatobiliary Pancreat Sci誌、Cancer Science誌、Int J Clin Oncol誌、Jpn J Clin Oncol誌のEditor & Associate editor、Medical Tribuneのがん専門特設ページ「Oncology Tribune」の総監修も務める。

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