痛烈批判された東京五輪のポンコツ感染対策

選手村の“交雑”は大丈夫か?

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感染症ビジョナリーズ 感染症ビジョナリーズ

誌説の背景:御大層な公式プレイブック

 New York Timesに「危険な茶番はやめるべき。東京五輪が強行される理由は3つある。金、金、そして金だ」と皮肉られても、日本政府も国際オリンピック委員会(IOC)も聞く耳を持たない。準備は着々と進み、開幕まで2カ月を切った。会期中の新型コロナウイルス感染症(COVID-19)対策として、IOC、国際パラリンピック委員会(IPC)、東京2020組織委員会は4月28日、アスリート・チーム役員向けに公式プレイブック第2版を公表した。

 これは2月に公表した初版を基に、大会参加者と東京都および日本在住者の「安全・安心(耳タコでおます)」を確保するために、前述の3つの委員会に加えて、東京都、日本政府、世界保健機関(WHO)で構成される「オール・パートナー・タスクフォース(何じゃこりゃ?)での議論も踏まえて作成された」とうたっている御大層なシロモノである。

 内容については、担当者がやたらと胸を張ってメディアで喧伝しているのでご存じの先生も多いと思うが、驚くべきはこの「なんたらタスクフォース」に「医療専門家」が加わっているということである。公式プレイブックの作成に携わった「専門家」のサイエンスレベル、国際感覚を疑わざるをえない。

 と思っていたら、New England Journal of Medicineにこの公式プレイブックのポンコツぶりを指摘する誌説が掲載されたので紹介する(N Engl J Med 2021年5月25日オンライン版)。

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川口 浩(かわぐち ひろし)

1985年、東京大学医学部医学科卒業。同大学整形外科助手、講師を経て2004年に助教授(2007年から准教授)。2013年、JCHO東京新宿メディカルセンター脊椎脊髄センター・センター長。2019年、東京脳神経センター・整形外科脊椎外科部長。臨床の専門は脊椎外科、基礎研究の専門は骨・軟骨の分子生物学で、臨床応用を目指した先端研究に従事している。Peer-reviewed英文原著論文は300編以上(総計impact factor=1,643:2019年6月現在)。2009年、米国整形外科学会(AAOS)の最高賞Kappa DeltaAwardをアジアで初めて受賞。2011年、米国骨代謝学会(ASBMR)のトランスレーショナルリサーチ最高賞Lawrence G.Raisz Award受賞。座右の銘は「寄らば大樹の陰」「長いものには巻かれろ」。したがって、日本の整形外科の「大樹」も「長いもの」も、公正で厳然としたものであることを願っている。

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