研究の背景:脳卒中が多いアジア人での厳格降圧効果は不明 科学技術研究における中国の発展は目覚ましいが、医学論文においてもいまや質量ともに米国を凌ぐ勢いである。 大規模ランダム化比較試験(RCT)において、2015年に米国で発表されたSPRINT試験は、その後の世界の高血圧治療を一変させた研究であった。収縮期血圧(SBP)120mmHg未満を目指す厳格降圧により、心血管イベントおよび全死亡のリスクが有意に低減したのだ。 中国もこのSPRINT試験とほぼ同規模のSTEP試験を完遂し、厳格降圧治療の有用性を示したのが、今回の論文である。 Trial of Intensive Blood-Pressure Control in Older Patients with Hypertension. N Engl J Med (2021年8月30日オンライン版) SPRINT試験の対象は白人、黒人、ヒスパニック系であったことから、STEP試験はアジア人で厳格降圧効果はどうかという課題への挑戦でもある。血管合併症として欧米人では心筋梗塞が多い一方、アジア人では脳卒中が多いという疾病構造の違いがある。中国で実施されたSTEP試験の意義は、日本の実地臨床においても参考になる。