コロナ感染は生殖能力と生殖補助医療に影響?

  • Facebookでシェアする
  • Medical Tribune公式X Xでシェアする
  • Lineでシェアする
感染症ビジョナリーズ 感染症ビジョナリーズ

研究の背景:SARS-CoV-2がヒトの配偶子と生殖能力に及ぼすのか

 新型コロナウイルス感染症(COVID-19)のパンデミックはさまざまな医療に大きな影響を及ぼした。不妊治療(生殖補助医療)の分野も例外ではない。

 世界保健機関(WHO)は2020年3月にCOVID-19のパンデミックを宣言し、非緊急である医療サービスは中止を余儀なくされた。当初は新型コロナウイルス(SARS-CoV-2)が生殖補助医療だけでなく、配偶子、妊娠、生まれた子供に及ぼす影響が判明していなかったため、国内外の生殖医学会は不妊治療を一時的に停止する勧告を出した。生殖補助医療が中止または延期されたことにより、多くの患者に精神的・経済的・肉体的な悪影響を及ぼしたと考えられている。例えば、英国の人口データモデルに基づいた研究では、不妊治療の開始が6カ月遅れると、38~39歳と40~42歳の女性における出産の可能性がそれぞれ9.8%、11.8%低下することが推定されている。

 その後、徐々にSARS-CoV-2に関する知見が明らかになるとともに生殖補助医療が再開されたが、SARS-CoV-2がヒトの配偶子と生殖能力に及ぼす影響についてはいまだ疑問が残っているのも事実である。

 今回、PubMed、MEDLINE、WHO COVID-19データベースから、SARS-CoV-2、配偶子、胚、生殖機能、生殖能力、生殖補助医療を検索し、2022年10月5日までに収載された生殖能力と生殖補助医療にSARS-CoV-2が及ぼす影響を検討した148報の論文のシステマチックレビューとメタ解析の結果について、箇条書きにしてまとめてみた。

Ata B, et al. SARS-CoV-2, fertility and assisted reproduction. Hum Reprod Update 2023 Mar 1; 29(2): 177-196.

                            

小堀 善友 (こぼり よしとも)

プライベートケアクリニック東京 東京院院長。2001年、金沢大学医学部卒業。金沢大学泌尿器科、米・イリノイ大学シカゴ校泌尿器科、獨協医科大学埼玉医療センター泌尿器科准教授を経て、2021年より現職。日本泌尿器科学会専門医、日本生殖医学会生殖医療専門医、日本性機能学会専門医、日本性感染症学会認定医、日本性科学会セックス・セラピスト。著書に『オトコの「性」活習慣病』(中公新書ラクレ)、『妊活カップルのためのオトコ学』(メディカルトリビューン)、『今日の診断指針第8版「男子性発育の異常」』(医学書院)など。

  • Facebookでシェアする
  • Medical Tribune公式X Xでシェアする
  • Lineでシェアする