アスピリンで糖尿病発症を予防?!

多面的作用は糖代謝にも及ぶのか

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感染症ビジョナリーズ 感染症ビジョナリーズ

研究の背景:糖尿病患者へのアスピリン投与の意義は揺らいできた

 かつて糖尿病は、心血管疾患の既往と同等の心血管疾患発症リスクを持つとされていた(N Engl J Med 1998; 339: 229-234、関連記事「もはや糖尿病はCVD equivalentでない」)。そしてかつて、心血管疾患の二次(再発)予防に有効なアスピリンを(Lancet 2009; 373: 1849-1860)、糖尿病患者における一次(初発)予防のためにも投与すべきとの考え方も存在した。実際、有名なsteno-2試験〔2型糖尿病患者に対する多面的介入による心血管疾患の発症予防効果を示したランダム比較試験(RCT)〕において、介入方法の1つとして(当初は心血管疾患既往者のみであったが、その後、全患者への)アスピリン投与がなされた(N Engl J Med 2003; 348: 383-393)。

 その後、日本のJPAD(JAMA 2008; 300: 2134-2141)を含む幾つかのRCTにおいて、糖尿病患者の心血管疾患初発予防に対するアスピリンの有効性は証明されず(BMJ 2009; 339: b4531Nat Rev Endocrinol 2010; 6: 619-628)、現時点では心血管疾患の既往のない2型糖尿病患者にアスピリンを投与することはまずなくなっている

 そんな中、心血管疾患既往のない高齢一般住民に対するアスピリンの投与が糖尿病発症を予防するのではないか、とも解釈しうる大規模RCTのpost-hoc解析の結果がLancetの姉妹誌に発表された(Lancet Diabetes Endocrinol 2024; 12: 98-106)。2型糖尿病患者や境界型耐糖能障害患者へのアスピリンの投与について考察する際の参考になると考え、ご紹介したい。

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