術前リハで「術後合併症が半減」は本当か?

プレハブ効果のシステマチックレビュー

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感染症ビジョナリーズ 感染症ビジョナリーズ

研究の背景:合併症を減らす鍵は術前にあり?

 外科領域において、術後合併症の発生率を劇的に低減させた歴史的な進歩として、19世紀の「無菌手術技術の確立」、20世紀前半の「抗生物質の導入」、1990年代以降の「低侵襲手術の普及」が挙げられるだろう。

 現在の外科的治療の合併症発症率は歴史的に見て非常に低い水準まで抑えられているが、依然、手術を控えた患者は「無事に終わるだろうか」「手術後は元の生活に戻れるのだろうか」といった不安を抱えており、そして術後合併症は依然として起こり続け、患者の身体障害を引き起こし、費用がかかり、時には致死的であり続けている。

 無菌手術や抗生物質のさらなる改善が合併症低減にほとんど寄与しなくなった現代において、新たな合併症低減策を模索するのは容易ではない。ところが、本稿で紹介するシステマチックレビューでは、ある介入を行うことで合併症発症率をなんと"50%も"低減し、同時に生活の質(QOL)や身体機能の回復を改善できる可能性が示唆された。その介入が「プレ・リハビリテーション(あるいはプレハブ)」である。

Relative efficacy of prehabilitation interventions and their components: systematic review with network and component network meta-analyses of randomised controlled trials(BMJ 2025; 388: e081164

 プレハブとは、手術前に運動療法や栄養療法、心理的サポートなどを組み合わせて行い、患者の身体的・精神的コンディションを高めることで、術後合併症を減らし回復を促進しようとする取り組みだ。果たして現代において、50%もの合併症低減というのは本当に実現可能なのだろうか?

須田 竜一郎(すだ りゅういちろう)

君津中央病院消化器外科部長。千葉大学大学院医学研究院臓器制御外科学。2001年藤田保健衛生大学卒。2001年より国立国際医療研究センターレジデント。2007年より同センター下部消化管外科技官。2018年より千葉大学病院第一外科を経て、2020年より現職。専門は下部消化管。日本外科学会指導医、日本大腸肛門病学会指導医、日本消化器内視鏡学会指導医、日本消化器外科学会専門医、日本消化器病学会専門医、日本臨床肛門病学会技能指導医、日本腹部救急医学会評議員。

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