(© Adobe Stock ※画像はイメージです) 研究の背景:フィダキソマイシン感受性低下株の頻度およびCDI治療転帰との関連は? Clostridioides difficile感染症(CDI)は、院内の抗菌薬関連下痢症の原因としてよく知られている。フィダキソマイシンは比較的新しい治療薬だが、早くも耐性リスクが懸念されている。欧州ではCDIのファーストライン治療薬がフィダキソマイシンだ(Clin Microbiol Infect 2021; 27: S1-S21)。アメリカではセカンドラインの扱いである(Clin Infect Dis 2018; 66: e1-e48)。 日本では非重症例ではメトロニダゾールがファーストチョイスだ。これは、メトロニダゾールのC. difficileに対する感受性が残っており、臨床試験での成績も良好で、北米などで多い重症化しやすい菌が日本では少ないためと考えられる〔日本化学療法学会・日本感染症学会CDI診療ガイドライン作成委員会編. 『Clostridioides difficile感染症診療ガイドライン2022』(PDF)〕。 フィダキソマイシンはマクロサイクリック抗菌薬で、RNAポリメラーゼによる転写を阻害することで効果を示す。米国臨床検査標準委員会(CLSI)は感受性のブレークポイントを定めていないが、欧州抗菌薬感受性試験法検討委員会(EUCAST)では疫学データを根拠に最小発育阻止濃度(MIC)0.5mg/L以上を耐性と定義している。16μg/mL、つまり16mg/L以上をもって耐性とする意見もある。in vitroではrpoBおよびrpoC遺伝子の突然変異が感受性低下に関連している。両者はそれぞれRNAポリメラーゼ複合体βおよびβ'サブユニットをコードしている〔Antibiotics (Basel) 2015; 4: 267-298〕。 そういうバックグラウンドを受けて、今回、この論文を紹介する。 Redmond SN, et al. Emergence and Spread of Clostridides difficile Isolates With Reduced Fidaxomicin Susceptibility in an Acute Care Hospital. Clin Infect Dis 2025; 80: 984-991.