「IBDは西洋病にあらず」、疾患の世界地図で明確化

理論「疫学的拡大を4ステージに分類」を実証

  • Facebookでシェアする
  • Medical Tribune公式X Xでシェアする
  • Lineでシェアする
感染症ビジョナリーズ 感染症ビジョナリーズ

研究の背景:IBDの疫学において記念碑的な研究

 炎症性腸疾患(IBD)は、20世紀初頭までは欧米に特異的な疾患とされていたが、21世紀に入りその様相は一変しつつある。近年、IBDの発症はアジア、アフリカ、中南米といった新興国・開発途上国にも広がりを見せており、もはや「西洋の病気」とは言い切れない状況である(J Epidemiol Glob Health 2023; 13: 725-739Gastroenterology 2012; 142: 46-54.e42)。このような地理的広がりと時間的変化を反映して、本研究の主任研究者でもあるKaplanらはIBDの疫学的進展を4つのステージに分類する理論を提唱していたが(Nat Rev Gastroenterol Hepatol 2021; 18: 56-66)、その理論的枠組みを実証的に裏付ける研究はなかった。

 本研究(Nature 2025; 642: 458-466)では、世界82地域における522件の人口ベースのデータ(1920~2024年)を用い、潰瘍性大腸炎(UC)とクローン病(CD)の発症率(incidence)および有病率(prevalence)の時間的・地理的変遷を解析し、IBDの疫学的進化を4段階で定量的に捉えることを試みている。さらに、機械学習(random forest)を用いて各地域のステージ分類を自動化し、今後の医療資源の計画にも応用可能な指標を提示している。この点において、極めて画期的な研究であるだけでなく、向こう数年以上にわたってIBDの疫学を語る上での記念碑的な研究でもある。

  • Facebookでシェアする
  • Medical Tribune公式X Xでシェアする
  • Lineでシェアする