多忙な糖尿病患者に朗報、「週末戦士」になろう! 運動療法の新たな知見 参考になった 名の医師が参考になったと回答 記事をクリップ 記事をクリップして、あとでマイページから読むことができます Facebookでシェアする Xでシェアする Lineでシェアする 研究の背景:ガイドライン推奨の「週3回以上の運動」を実践できない人は多い 糖尿病の運動療法として、有酸素運動やレジスタンス運動(筋トレ)の有用性が知られている。有酸素運動については、中等度の強度で週に150分以上・3回以上、運動しない日が2日以上続かないように行うこと、レジスタンス運動については、連続しない日程で週に2~3回行うことが勧められている(『糖尿病治療ガイド2024』)。 一方で、これだけの時間を運動に割くことができないという人は極めて多く、かくいう私自身もこれだけの運動量を確保することはできていない(おそらく、運動療法の指導をしているだろうほとんどの糖尿病専門医も実践できていないと思われる)。 そんな中で注目されているのが、「座位時間の中断」と「週末戦士」である。座位時間の中断とは、運動する(身体を動かす)ことばかりに目を向けず、じっとしている時間を減らす、または中断させることに目を向けようという考え方であり、「ブレーク・サーティー:break 30」(30分座っていたら、ちょっと立ち上がるなどしましょう)という言葉が標語として使われつつある(日本糖尿病協会の機関誌『さかえ』2025年7月号でご紹介させていただいた)。欧米では"breaking up prolonged sitting"という言葉で強調されている(Diabetes Care 2022; 45: 2753-2786)。 もう一つ、注目されている「週末戦士」とは、ウィークデーは多忙で時間が取れず運動できないが、週末だけは身体を動かしている人のことである。週末だけはフィットネスセンターに通ったり、ゴルフに出かけたりしているという先生方も多いのではないかと思うが、こうした人たちのことを「週末戦士」と最初に学術的に表現したのは、おそらく米・ハーバード大学卒業生健康研究であろう(Am J Epidemiol 2004; 160: 636-641)。 この研究では、喫煙、BMI 25以上、高血圧症、高コレステロール血症などの危険因子が全くない人と、1つ以上の危険因子を持っている人に分け、危険因子が全くない人では「週末戦士」でも十分に死亡リスクを低減できることが示された。一方、1つ以上の危険因子を持っている人ではこうした関係性は示されず、「日常的に運動」(regularly active)だけが死亡率を低減させていた(図1)。 図1. ハーバード大学卒業生健康研究における身体活動と死亡リスク(不活動を1として相対リスクで表現) (Am J Epidemiol 2004; 160: 636-641) では、喫煙、BMI 25以上、高血圧症、高コレステロール血症と同様に死亡リスクとなると考えられる糖尿病がある場合にはどうなのであろうか。この疑問に対する回答となる論文が発表された(Ann Intern Med 2025; 178: 1279-1286)。それによると、基本的には糖尿病患者の場合には「週末戦士」でも「日常的に運動」と同程度の(あるいは心血管死亡に対してはそれ以上の)死亡リスク低減効果が認められた。観察研究であり、因果関係を直接示すものではないものの、今後のガイドラインにも影響を与えうる論文としてご紹介したい。 参考になった 名の医師が参考になったと回答 記事をクリップ 記事をクリップして、あとでマイページから読むことができます Facebookでシェアする Xでシェアする Lineでシェアする ×