【研究の背景】海外で開発進む予防的治療アプローチ IgE依存性(Ⅰ型)食物アレルギー管理の原則は原因食物の同定、回避および誤食の際のアドレナリン筋注である。しかし近年では、小児領域を中心として予防的管理へのパラダイムシフトが進んでおり、症状の誘発予防が重視されつつある。 予防的管理による治療アプローチは2種に大別できる。1つは、免疫学的機序によりアレルゲンに対する生体防御反応を誘導する食物アレルゲン特異的な能動免疫療法(allergen-specific, active immunotherapy;ASIT)である。もう1つは、IgE依存型アレルギー反応を抑制する生物学的製剤を用いる食物アレルゲン非特異的な受動免疫抑制療法(allergen-agnostic, passive immunotherapy;APIT)だ。 APITに分類される治療アプローチには、日本においては保険適用のない薬剤を用いるものや海外においても開発段階のものが含まれるが、将来的な食物アレルギー診療の流れを知るためにも今から押さえておきたい。食物アレルギー介入研究のエンドポイントは、①原因食物摂食時の反応閾値の上昇させる「脱感作」、②治療により臨床反応が消失した状態が数週間から数か月間持続する「寛解」、③無治療で摂食による臨床反応の消失および無再発となる「耐性」-があり、通常は「脱感作」を目標設定とする。最終的には耐性誘導に導ける治療が最良なのは言うまでもない。そこで今回はJ Allergy Clin Immunol Practから、これら主要な治療アプローチに関するレビュー論文(2025; 13: 741-744)をご紹介したい。